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I‘m yours forever

第5章 美月は何も知らなかった 後編





「20の時に協議離縁を持ちかけた事がある。こちらも極力話したくはなかったが、就職し独り立ちをする際、養子縁組も解消しておこうと思っての行動だった。するとあの女、育ててもらった恩を仇で返すつもりかと激昂し始めた。お互い無関心なのであれば、将来、面倒事になる前に親子関係を解消するべきだと俺は主張したが、全く聞き入れてもらえず「離縁は絶対に認めない」の一択だった。終いには、お前が離縁調停を申し込めば、夫も道連れにして自ら命を絶つとまで言ってきた。見下げ果てたよ。」


「................それで断念してしまったんですか?」


「いや....やはり諦めきれず、社会人となってから父に電話で離縁調停の申し込みを相談していた。父は賛成だったが、子供への執着が凄まじい母の神経を逆撫でるような真似をするなと諭された。また脅迫されたか殺気でも感じていたんだろう。何処までも無責任で腑抜けた事を抜かす奴だったが、相続問題はこちらで対処とすると言っていた。従って私が出来た事は改名のみだ。」


「その改名は....その....当初付けられた名前に戻したという事ですよね?」


「そうだ。家庭裁判所の許可を経て、名前だけは取り戻せた。私の実母と碌でなしの父親、どちらが名付けたかは不明だが、義母の独断で付けられた名前では無い、黎一という名前が返ってきて安堵した。」


「で、でも結婚式に呼んだって事は改名を敢えてバラしたって事ですよね?何で隠さなかったんです?揉めなかったんですか?」




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