I‘m yours forever
第5章 美月は何も知らなかった 後編
「焦った父親から急遽帰郷するよう連絡があった。顔面蒼白になった養母は再び離縁の話を持ち出すつもりかと息巻いていたが、戸籍上親である限り扶養義務は果たす。離縁をするつもりで改名したわけではないと俺が断言すると、怒りを鎮めてくれた。少々揉めたが、修羅場にはならなかったな。.....すまんな美月、気分が悪くなっただろう?」
「え?....あ...だ、大丈夫です。」
「顔色が悪いぞ。それに...おい...手が冷えてるじゃないか。何故早く言わないんだ?」
氷水に浸したように冷え切った私の手を握りしめながら、黎一さんはそう私に問い掛けた。
「体調不良になったわけじゃありません。ただ............ちょっと黎一さんが過ごしてきた家庭環境にショックを受けてしまっただけで...で、でも最後まで聞きたいです。」
「.............。そうか...だが無理はするな。辛くなったらすぐに言いなさい。」
「は、はい.......。」
私が頷くと、私よりも一回りも大きな黎一さんの手が離れていく。
両手には生暖かい温もりが微かに残った。