I‘m yours forever
第5章 美月は何も知らなかった 後編
「黎一さんと休日を満喫したかったのに。」
「............具体的に何がしたかったんだ?」
「ゆっくりお茶でも飲みながら、何気ない話をしたかったんです。」
「...なんだ、私が仮眠を取った後でも出来るじゃないか。後にしてくれ。」
彼はそう冷たく言い放つと、自室に繋がる木製扉を開いた。
「今したかったんです。」
「ワガママを言うな。後にしろ。」
黎一さんは強引に彼の室内へ侵入している私を扉の外へと押しやる。
全く相手にされていない事に私はムッとして唇を尖らせた。
「私の事、女神だって言った癖に。」
少々不機嫌ですとアピールする為に、私は昨日の話を持ち出した。
「女神では無い。お前は私の妻だ。」
「でも昨日は女神だって。それに飼い慣らせとも言ってましたけど?」
「知らん!!!」
即答した彼の声は非常に荒ぶっていた。
そのまま私の返答を待たずに勢いよく彼は自室の扉を閉めたのだった。
....本当に知らないんだったら、そんなにムキにならなくても....
案外、全部覚えていたりして....
ポツーンと廊下に取り残された私は一人、そんな事を思っていたが、やがてフフッと笑みを溢すと、再び1階へと降りていく。
それから約15分後。
ソファーに腰掛け、お茶を啜りながら、録画していた料理番組を見ていた私だったが、「おはよう、美月」と少々ぶっきらぼうに言い放った黎一さんが再びリビングルームへと姿を現した。
その少なすぎる仮眠時間には触れない代わりに、私はクスッと笑みを零すと「おはようございます、黎一さん」と爽やかな笑顔を彼に向けたのだった。