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I‘m yours forever

第5章 美月は何も知らなかった 後編





太陽が天高く登った日曜の正午。
あれから自室のベッドで熟睡した私の頭は、快晴の如く晴れ渡っていた。
欠伸を零しながら、私は2階からリビングへと降りていく。

就寝する数時間前、西條さんや黎一さんと交わした濃厚な会話の数々はまだ頭に残っていた。


リビングに取り付けられたモスグリーンのカーテンから僅かな日差しが差し込むが、カーテン自体は閉まったままだった。


まだ...寝てるのかな?
黎一さんにしては珍しいけど、昨日遅かったからなぁ....。


彼の事を考えながら、喉を潤す為に暖かいほうじ茶を飲もうとキッチンへと足を向けようとした。
その瞬間、玄関の扉が開く音と聞き慣れた革靴の足音が同時に耳に入り、私は急いで玄関へと足を進める。


「......あれ....黎一さん....?」


日課のウォーキングに行ったのかと思っていた私だったが、その予想に反して彼はスーツを着用しており、手には撥水加工がある通勤用のビジネスバックを持っていた。
彼は無言でフローリングの床を進み、2階に繋がる螺旋階段を登っていく。


もしかして...月曜日だと勘違いしたのだろうか?
その事に途中気付き、引き返してしまったのだろうか。


黎一さんらしくないミスだ。


幾度も「黎一さん」と話しかけても全く返答する気配の無い彼の胸の内を想像しながら、彼の後に続いて私も2階へと繋ぐ階段を登る。


「.....悪いが、少々仮眠を取る。」


階段を登ったすぐ側に設置された彼の自室前、やっと黎一さんは口を開いてくれた。
が、言外に「あっちに行け」と言われているようで、少々傷ついた。



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