I‘m yours forever
第1章 美月、傷つく
これが甘え上手な女性や奢ってもらって当たり前という価値観の人なら彼と衝突せずに済むのかもしれないが、私は違う。
でも大好きな彼とこんな些細な事で口論に発展したくもなかった。
そんな理由から今日は彼に無理を言って、家で待っていてもらっている。
「それに一人でゆっくり買い物を楽しみたいので....すみません。終わったら連絡します。」
理由を赤裸々に告白し、そう黎一さんにお願いした際、「.........分かった。」と渋々了承してくれた彼の顔は見るからに寂しそうだったのを未だに覚えている。
伸び伸びと買い物出来るのはいいけれど、あまり長引くと黎一さん、拗ねちゃうからなぁ.....。
昼過ぎに出かけて、今は日も落ちかけている夕刻。
後は化粧品だけ買って、早く黎一さんに連絡しよう。
冬場に重宝するセール品のセーターとブーツを購入し、充実した買い物を楽しんだ私はそう決めると、人でごった返している信号機の前で信号が変わるのを待っていた。
R&Bの心地良い音楽を流していたイヤホンが不意に聞き覚えのある着信音へと変わる。
発信者を確認すれば、「黎一さん」と表示されていた。
「今、アーケード街だ。迎えに行く。何処に居る?」
開口一番に言われた言葉がそれで私はプッと吹き出してしまった。
「PARCOで買い物を済ませて、近くの百貨店に向かう所です。」
「分かった。すぐ向かう。」
「待ちきれなかったんですか?」
「..........そうだ。悪いか?」
「いえ、何だか正直で可愛いなぁって。」
「可愛いのはお前だけだ。私はそんなお前のボディーガードに徹するとする。ではまた。」
私に揶揄われて恥ずかしくなったのか彼は一言そう言うと、あっさり電話を切ったのだった。