I‘m yours forever
第3章 美月は何も知らない
成人を迎えるまで、私の人生は病弱な義母が握っていた。
肉親であった母は、既婚者でありながら独身だと偽った父に騙され、妊娠した。
「胎児認知し、養育費と慰謝料を支払う為、どうか産んで欲しい。」と懇願した父の身勝手な要求を彼女が受け入れたからだ。
だが出産後、退院して1月を経たぬうちに生後間もない子供を置いて母は自殺した。
その後、義母が養子縁組を組んだ事で、私は摘出子となったわけだが、尊敬の念を抱く事など到底出来ない父と奴の不貞行為に人生を狂わされた義理に育てられ、悲惨な幼少期を過ごした。
義母は私を本当の息子のように扱った時期もあったが、青年期に差し掛かる頃には、手の平を返すように暴言を浴びせる事が多くなった。
息苦しさを感じながら、唯一のめりこめた物が勉学だった。
中学、高校と勉学に打ち込んだ結果、国公大に進学した私は何人か女を作った。
私の容姿に惹かれて寄って来た女も居たが、
皆最後は私の狂気じみた独占欲に怯えて去って行った。
蛙の子は蛙だ。
あの毒親、特に義母から学んだ事は、いかに自分を取り繕い、相手を上手く支配出来るかだ。
そんな私が普通の恋愛感情等、分かる筈もなかった。
嫌という程、それを思い知らせされた大学生活を経て、就職を機に家を出た。
あの家庭から離れ、心にゆとりが生まれた私の生き甲斐は仕事と煙草だった。
性欲を満たす為に一夜限りの関係を持つ事は何度かあったが、社会人となってから特定の恋人を作った事は一度もない。
結婚は最早諦めていた。
美月に出会わなければ、私は独身のまま生涯を終えていただろう。
そう確信している。
だからこそ、決して彼女に不満を持たせる事はあってはならないのだ。
彼女に嫌悪感を抱かれぬよう、
私は細心の注意を払っていたつもりだった。