I‘m yours forever
第1章 美月、傷つく
「そうですか。その器量でしたら、女優に転職された方が良いですよ。貴方のような綺麗な方が勿体ない。成功すれば1日で50万も夢ではないでしょう。」
「....すみません、興味は無いです。他を当たってください。」
容姿を褒められた事で一瞬動揺したが、すぐさま気持ちを切り替えると、私はきっぱり尾崎に断った。
「失礼、女優というと緊張してしまいますよね。それでは顔が映らないパーツモデルとかはどうでしょう?」
「ですから私、そういった事に興味は無くて....。」
断り続けているのにも関わらず、男の勧誘は予想以上にしつこかった。
赤の他人に怒鳴りたくはない。
なるべく穏便に。
そういう気持ちが人より一層強い平和主義の美月にとって苦痛の時間が流れていく。
「ではせめて1枚お写真を撮らせて頂く事は可能でしょうか?雑誌のスナップ写真として掲載させていただきたいのです。」
近道として裏路地のような細道を選んでしまったけど、こんな事になるなら最初から大通りを選んでおけば良かった。
いい加減にしてほしい。
きっぱり断れずに、そんな風に思っていた私の耳に、妙な話が舞い込んできた。
雑誌の....スナップ写真...?
何だそれ....。
でもそれを撮れば、
この勧誘から逃れられるのだろうか...?
「まあ....1枚だけならいいですけど....。」
内心嫌だなと思いながら渋々了承すると、男の目が途端にキラキラと輝いた。
「ありがとうございます!では白壁をバックに撮らせて頂きたいので、少し場所を移動を致します。見つからなければ、近くに停めてある車で移動しましょう。」
そのまま流暢に喋り出す男に手を差し伸べられた。
なんだか、長くなりそうな気がしてきた....。
受けるんじゃなかったかも....。
でもここで断ったら、また何か言ってきそう...。
写真撮影をOKしてしまった私は、若干後悔を感じ始めていたが、男の手は取らずにペコリと頷こうとした。