I‘m yours forever
第5章 美月は何も知らなかった 後編
「あの...どちら様で...?」
「.....西條だ。泥棒だと叫ばれるかと思ったが、聡い方でありがてえ。黎一の旧友だ。」
旧友...あ、今日一緒に飲んでいた方だろうか?
西條と名乗った男性は、高身長の黎一さんと比較しても背丈に差がない。
細身の彼と比べて、ややがっしりとした欧米人のような体型だ。黎一さんと同様にスーツが良く似合っているが、知的な雰囲気が漂う黎一さんと違って、ダンディかつ渋い魅力を感じられた。今でいうイケオジってやつだ。
「い、いえ。黎一さん酔い潰れちゃったんですか?」
「そうなんだよ。黎一の奥さん...だよな?」
「そ、そうです。すみませんパジャマ姿で。」
「いやいや、こっちこそ。深夜過ぎて他人の家のインターホン鳴らすのは気が引けちまってよ...。コイツのズボン漁ったら、鍵出てきたから、それで入って寝室まで運んでやるつもりだったんだが、煩かったよな?」
「そ、そんな...お気遣い頂いて。ですが、彼の寝室は2階ですので、1階の予備部屋かリビングのカウチソファーの方が良いかと....。」
「あー...マジか。んじゃ、ソファにするわ。」
そう西條は言うと、黎一を担ぎながらリビングの奥へと進み、L字型のカウチソファへ乱雑に彼を横たえさせる。
まるで荷物のように扱われている黎一さんを呆然と見ていた私だったが、急いで立ち上がるとキッチンへと向かった。