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狂愛の巣窟〜crossing of love〜

第8章 【戻れないのなら一緒に乗り越えてください…】








ヤリスクロスを走らせ、とある場所で停車する。




「レギュラー満タンで」




サングラスしたままそう告げて支払いはクレジットカードで。
受け取る際に小さなメモを店員さんにさり気なく渡す。
ニッコリ笑ってガソリンスタンドを後にした。




そろそろ良い頃合いかな、と思い立ち寄ったのだ。
忘れかけた頃に甘い蜜を垂らす。
引っ掛かるか引っ掛からないかは彼次第。




ワイヤレスイヤホンを片方外してよくよく話を聞いてみるとただのナンパで首を振りお断りする。
1人でカフェしていると誘ったはずの人以外もたまに引き寄せてしまう。
やっぱり来ないかな、と諦めて帰るところでした。
あまり待てるタイプでもないですし、ガヤも煩いので。




駐車場までついてくるとは思いませんでしたが、しつこいナンパのようです。
イヤホンを外し文句を言おうかと思いましたが、彼のお出ましでした。




走って来たのか、汗を掻いて息も荒い。
「ごめん、待たせて」と現れてナンパを撃退してくれます。




「乗って」




助手席に彼を乗せてエンジンをかける。
エアコン全開にし、ハンカチで汗を拭いてあげました。
遠慮しないで、汚くなんかないから。




「来てくれないかと思った」




緊張してるのかしら。
チラチラこっちを見て背中も浮かせてる。




「あのメモ………嬉しかったです」




「時間指定しちゃってごめんね、まだ勤務時間だったんじゃない?」




「いえ、もう上がりだったので問題ありません、ただ、ちょっと来るまでは躊躇しましたけど」




「何で?」




「えっと、本当……なのかな?って」




「あぁ、待ってるのが?」




「はい、誂われてたらどうしようって」




「誂うように見えた?」




「いえ、あ……でも、僕なんかに……とは思います」




「僕なんかに………なに?」




「え?いや、あの………」




「んふふ、今のは誂っちゃった、ごめんね」




「え?え?アハハ、はい」




可愛いね、初々しくて。
一颯くんと初めて会った時の事を思い出す。
サングラスを取って見つめてあげた。
3秒と目が合わなかったね。
ハンドルにもたれて見つめちゃお。
なんで汗ぶり返してるの?
あ、そうだ。







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