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狂愛の巣窟〜crossing of love〜

第8章 【戻れないのなら一緒に乗り越えてください…】






「え…?」てな顔、びっくりした?
あまりにも近くに来て固まってる姿は吹き出しそうになるよ。
シートベルト、してね……と近付いたらキスされるかと思わせるやつ、まだ引っ掛かってくれる人が居たとは。
お顔が真っ赤っ赤ですよ。




「安全運転するね」




「…………はい」




ん〜可愛い。
ドキドキしてくれてるのかな。
満更でもなさそうだけど。
女に慣れてない感じが良い。
静かに車を走らせる。




「航平くん……だっけ?」




「はい、覚えててくれたんですね」




「顔は絶対に忘れないよ、えっと、お名前は……渡辺、航平くん?」




「はい、当たりです」




「ヤッタ、ガソリンスタンド辞めてなくて良かった〜」




「僕も、また来てくれて良かったです」




「ガソリンスタンドは働いて長いの?」




「はい、掛け持ちなんですけど働き出して……もうすぐ2年、とか」




「へぇ、偉いね、働き盛りだ」




「いえ、生活するのにいっぱいいっぱいです」




「掛け持ちとか大変だよね、最近遊べてる?そんな暇ない?」




「あ〜そうっすね、最近何処か遊びに行ったと言えば……昔からの連れとマス釣りに行ったくらいです」




「へぇ、釣りするんだ」




他愛もない会話をしながら目的を海沿いドライブに。
車種褒められたの初めてだよ。
格好良いのかな。
だいぶ走ったところで
「あの、そろそろお名前教えて頂いても良いですか?」との申し出が。




「あれ?言ってなかったっけ?」




「次会えたら教えるねって言われたんですけど」




「え?え?カード切ってるし、名前とか見られてるもんだと思ってた、アハハ」




「だから僕、見ないようにして……ちゃんと教えてくれるまで待った方が良いのかなって」




「アハハ、そうだったんだ?私だけ名前知っててお喋りしてた状態だった?ごめんごめん、失礼致しました」




照れながら私を見てくれている。
運転してるからまともには見れないけど視線は感じてるよ。




「じゃ、ダメじゃん、名前も知らない人の車に乗っちゃ」




「え?それは…………」




「ウソウソ、乗ってくれて嬉しいです、んふふ、十和子……佐倉十和子です」









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