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狂愛の巣窟〜crossing of love〜

第5章 【溺れる覚悟はありますか…】






10まで言わなくても話を終えられる。
だから蜜を余分に与えてしまうのね。
手を握り舌を絡める。
サッと離れていつもの笑顔を見せたらもう終わり。
私たちは定位置に戻る。
専業主婦と隣人としてそれぞれの生活に。




時々やって来る一颯くんの相手もしながら外の世界でも蜜を振り撒くの。




「あの、お名前教えて頂けませんか」




街中でそんな声も掛かるほど自分磨きにも余念がない。
連絡先もよく聞かれる。
しつこい場合は困ってしまうけど「結婚してるので」と言うとほとんど引き下がってくれる。




私からターゲットを絞って近付く以外は眼中にない。
声を掛けられて嬉しい反面、もっとスマートに一瞬でお断り出来る方法はないかな、と模索中。




本当に、たまにだけど心配してくれてなのか一颯くんが迎えに来てくれる時がある。




「俺の女に何か用?」ってちょっと無理があるから。
「えっと、弟さん?」とか言われて噛み付こうとしちゃうし。




「ごめんなさい、主人なの」って無理あるけどそう言うと機嫌直ってくれる。
年の差婚ってすぐわかっちゃうと思うけどな。
帰ったら「よく出来ました」ってキスしてくる。
めちゃくちゃ嬉しそうに抱き締めて。




「でもありがとう、助かった」




「本当、一人で出掛けるの心配……」




「ごめん………」




「ハァー、本当マジで結婚しよ?」




「バカ………」




「親父と別れて?四六時中一緒に居たい」




「過保護過ぎ………今日のナンパもたまたまだから、全然声掛けられない日もあるよ」




「ダメ、絶対ウソ」




「本当だってば……」




「同じ指輪つけて、夫婦なんだって堂々と歩きたい……義理の関係はヤダ」




時々こうして不安を漏らしてイヤイヤ期になる。
そこがまだ若いなって思うけど、口にしたらもっと拗ねちゃうだろうね。
背中を擦りながら「ありがとう」って言っても納得してくれてないのは痛いほどわかってる。




キスかな?怒ってるのかな?
ジっと見つめられ動けなくなる。




「まだウソだけど、俺のこと主人だって言ってくれたのすげぇ嬉しかった……本気にしちゃうけど良い?外でまた、俺のことそうやって言ってくれる?」




「んふふ、誰に?ナンパしてきた人に?」








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