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孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第26章 誓い

=黎佳=

遥人さんは私と同級生だった。

まだ将来を決定するには早すぎる遥人さんに、私との結婚は嫌ではないか、と尋ねると、遥人さんは私の目も見ずに行った。

「おじいさまが、とってもいい子だからっておっしゃるんだから」


遥人さんは口数が少なく、自分から話しかけてくることもない。おしゃべりで人好きするおじさまとは正反対のおとなしい人だった。


高校1年の夏休みに結納が行われ、おじさまと奥様の詩織さん、香さんが見守る中で婚約指輪を受けた。

遥人さんに震える指で婚約指輪を指に通してもらいながら、私はそれとなくおじさまに視線を向けた。

───これで私はずっとおじさまのそばに居られるのね。

おじさまはかすかに頬を染めて、うなずいた。

その目は誠実な奥深い輝きを湛えてまっすぐに私を見つめていて、私は幸せをかみしめた。



フィアンセとなった私と遥人さんとは、クリスマスやバレンタイン、花火大会など、イベントのたびにデートを重ねたものの、まるで友人のような関係が続いた。

手すら握ってこない遥人さんに私はしびれを切らして、あるとき質問した。

「私と近づくのは、おいや?」

「そんなわけないよ。ただ、言われているんだ、おじいさまに」

おじさまは遥人さんに、結婚までは我慢するようにと言っているようだった。

嫌われているわけではないと知って安心したし、今後も無理に迫られることもないと思うとだいぶ気持ちが楽になり、以降も友達以上恋人未満の関係を、不安や疑問なく続けることができた。

そんな関係を続けるうち、私は遥人さんに並みならぬ信頼感を抱くようになっていた。

悩みごと、愚痴、なんでも遥人さんに話せるようになっていた。

ただ、おじさまとの関係をのぞいては。



高校2年に上がると、結婚式の準備が始まった。

遥人さんは大学の受験勉強が本格的になり、私たちはそれぞれに将来に向けての準備を進めることになった。

「結婚式のこととか、よくわからないし、黎佳ちゃんが好きなようでいいよ」

と遥人さんは余裕たっぷりにほほ笑んだ。

将来を左右する試験と、人生を大きく変える結婚が同時期に迫っていると言うのに、遥人さんは焦りや不安を見せることは一つもなかった。

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