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孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第32章 妊娠

=Reika=

それから二週間がたち、妊娠検査薬を使って陽性を確認した直後、暗示にでもかかったかのように吐き気が体の中を渦巻き始めた。

不意に襲ってくる悪寒、常にあふれてくる吐き気と唾液…悪阻は想像以上のものだった。

それでも私は嬉しくて、会長の執務室に電話をかけた。

「黎佳、どうした」
「おじさま、私赤ちゃんを授かったわ」

少し間があいてから、ほんとうか…と慌てたように答えた。

「ええ。おじさまの子よ」
「黎佳、おまえは…」

それからしばらく間が開いて、涙声でおじさまは言った。

「ありがとう…黎佳」



おじさまは一人息子の樹さんを失ってから、体の一部をもぎ取られたように痛そうで寂し気で悲しげだった。

私はそんなおじさまに少しでも明るい未来が照らしてくれるようにと願っていた。

そこでふいに、おじさまの子供を産みたいと思い立ったのだった。

それはおじさまのためというよりは、私自身の生きる喜びのためと言った方がいい。

私はおじさまの血を引く子供をおなかに宿したかった。

そして、慈しみ、大切に育て、愛情を注ぎたい、ただただそう思った。


遥人さんには申し訳ない思いもある。

けど、二人目は遥人さんとの間の子を産んで、その子も大切に愛情を注いで育てたいと思う。

今持っている愛情のすべてを遥人さんにも注ぐことで許してもらいたいと願った。

生まれた時から何も持たない私は、愛を注ぐことしかできないのだから。

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