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孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第32章 妊娠

妊娠の知らせを聞いた遥人さんは、喜びつつ戸惑っているようだったが、私の体調を親身に気遣い、優しくしてくれた。

私は本当に幸せだと思った。



香さんは、私の妊娠を心から喜んでくれた。

母親がいない私にとっては、妊娠中の香さんのサポートやアドバイスほど心強いものはなかった。

悪阻がひどくご飯が食べられなくなると、香さんはなぜかファーストフードのフライドポテトを買ってきてくれた。

「フライドポテト?」

「そうよ。私の娘が妊娠したとき、美味しい、ってよく食べてたのよ。食べすぎはよくないかもしれないけど、美味しく食べられれば、ストレスも減るわよ」

香ばしく揚ったジャガイモの匂いは、意外にも私の食欲を刺激した。

アツアツのポテトをつまみ、カリッと噛むと、つわりで始終唾液が出続ける口に、ほくほくしたポテトの触感と程よい塩味が気持ち悪さを忘れさせてくれた。

香さんが一緒に持ってきてくれたグレープフルーツのゼリーも、胸焼けするような重苦しさを忘れさせてくれた。


「出産後は母乳を出すために乳腺を開通させるの、知ってる?乳腺開通のためのマッサージは、身がよじれそうに痛かった。私ね、マッサージしてくれる助産婦さんを叩いちゃったのよ。だから早いうちから胸を揉んで開通させておくといいわよ。遥人さんにおねがいすると、夫婦のスキンシップにもなっていいわね」

最後の一言で、香さんは悪戯そうに笑った。

私はうなずきながら、心なしか重みを増した乳房を見下ろした。


自分の体が、「母」の体になっていくことが、不思議だったけど、嫌ではなかった。

新たに愛すべき存在ができることが嬉しかった。



香さんと話したあとの休日、遥人さんに乳腺の話をすると、彼は目尻をひきつらせて笑った。

「じゃあこんど、時間あるときにやってみよう」

そう言って、読みたい論文があるからと言って勉強部屋に籠ってしまった。

乳首は日に日に黒ずんで乳輪が大きくなった。

急に訪れた変化に、そこはかとない不安が押し寄せる。

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