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孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第33章 出産

=Reika=

臨月がやってきた。

お腹の子は順調に育っていた。体調も安定していて、お産の準備も香さんのおかげで順調に進み、これと言った心配はなかった。


そんななか、おじさまだけがそわそわしていた。

暇を見つけては部屋を訪ねて私の様子を確認し、出張先では安産祈願のお守りを買い集めて届けてくれた。おかげでお守りは数十個にもなった。


遥人さんが最後の定期検診に付き添って、エコーで赤ちゃんの様子を見て、声を震わせた翌日。

明け方、股の間を冷たい体液が伝い落ちる感触で目覚めた。

尿漏れとも違う、たらたらと透明な液体がひっきりなしに出て下着を濡らす。

私は病院に電話をかけ、遥人さんを起こした。

「遥人さん…破水したみたいなの。病院に行くわ」

遥人さんは飛び起き、両手で顔をこすってから、上着を羽織って電話をかけ始めた。

「妻が破水したので、すぐ車を」

そう言って電話を切ると、荷物を玄関に運び、私の肩に上着をかけてくれた。

「痛くない?下まで歩ける?」

思いのほか冷静な遥人さんが心強かった。

エントランスにつけられた車に乗り込み、病院に向かう。

遥人さんは、おじいさまが心配するだろうから、と真っ先に電話をかけてくれた。


先生の診察の結果、帝王切開で急遽出産することになった。

手術なので誰も立ち会うことはできず、私は助産師さんの手を握って赤ちゃんが取りだされるのを待った。

かすかに引き攣れる感触、カチャカチャと器具がぶつかる音に、体の芯が無意識に縮こまってしまう。

それでも、赤ちゃんが目の前に差し出された時は、この上ない幸せな気持ちが私を包んだ。

赤ちゃんは小さくて、まだふやけた肌で、ついさっきまで私の中にいたことがわかる。

それでもうぎぇっ、うぎえぇっと可愛い鳴き声を力いっぱい絞り出すその赤ちゃんをたまらなく愛おしく感じた。

助産師さんは臍帯を切る作業を私にさせてくれた。手が震えたけど、教えてもらいながらなんとか切ることができた。

赤ちゃんを胸に抱く。

助産師さんが、まだゆるゆると動く小さな頭に優しく手を添え、信じられないほど小さな唇を私の乳首にあてがうと、赤ちゃんは私の小指の先ほどしかない舌が私の乳首を探り当てた。

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