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孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第34章 碁盤攻め

=黎佳=

私は母親として毎日を楽しく過ごしていた。

香さんは週に3日、午前中に来てくれて、耀が食べやすく、栄養も豊富な料理を色々教えてくれた。

魚の臭みを上手に消したつみれ汁、刻んだ野菜やチーズが入った和風オムレツ、具沢山の炊き込みご飯…

「小さい子にとって、いろいろなおかずに手を伸ばすのは、けっこう大変な作業みたいね。だから一品で栄養が取れるものを作ってあげると、耀さんが食べるのも楽だし、作る方も楽よ」

といったアドバイスをくれる。

香さんは検診などにも付き添ってくれて、耀を育てるうえで不安なことなどは、すぐに香さんに話すことができた。

二人の子を育てた香さんは、的確に、私が安心できるような助言をくれた。


香さんがいなかったら、私はどうなっていただろう。



周囲の人たちに助けられながら、私はなんとか毎日をすごすことができていた。


気づけば全くの孤独だった私は、多くの人に囲まれ、ささえられている。

この恵まれた境遇にどう感謝すればいいかわからない。

私にできることは、精一杯の愛情を注ぐことしかない。

悲しいときは優しく包み込み、楽しいときは一緒に笑う。抱きしめ、慈しみ、肌を触れ合わせる。そのくらいのことしかできないけれど…。



耀が4歳になったころだった。

ある日、遥人さんが嬉しそうに帰宅した。

「黎佳、来週の黎佳の誕生日、京都に旅行に行くよ」

駆け寄った耀を抱き上げながら、遥人さんは言葉を弾ませた。

「急にどうしたの」

「黎佳へのプレゼントだ。いつも頑張っているから、たまには息抜きしないと」

「そんな。私はちゃんと息抜きできてるわ」

「そんなこと言わないで。僕とおじいさまで準備したんだから。いいかい。京都へは、僕と、耀と、黎佳。そして、おじいさまと香さんも一緒に来るんだ。いいと思わないか。耀を頼んで僕たち二人だけで出かけることもできる」

私は自分の表情がパッと明るくなるのを感じた。おじさまが一緒…私は一気に胸が躍った。

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