テキストサイズ

孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第37章 指

=Reika=

旅行から半年がたった春、第二子を宿した。

一度出産を経験した私は、比較的穏やかな妊婦生活を送ることができた。

耀のお世話もあるせいで気持ちが引き締まっているためか、悪阻もひどくなく、体調の管理も苦労なくできた。

相変わらず香さんに頼ることは多かったが、遥人さんとの子がお腹にいると言う喜びと、目の前で耀が成長する喜びでいっぱいの毎日を過ごした。

出産は帝王切開で、手術予定日に無事出産することができた。産後の回復も、前回の経験があったので順調だった。

生まれた女の子には彩という名前を付けた。

遥人さんは蕩けそうな顔で彩を可愛がった。

沐浴や寝かしつけは、遥人さんも香さんもこぞって引き受けてくれたので、耀との時間もしっかりとることができた。

幼稚園の年長になった耀は、ときおりぐずることはあっても、お兄ちゃんとしてますますしっかりとして、頼もしい限りだった。


そのころ、遥人さんは社長に就任した。

若いので苦労は多い様子だったが、周囲のサポートで、順調に実務をこなすようになっていた。

おじさまはいまだ社内で強い発言力を持っていて、彼の息のかかった社員たちが重役に名を連ねていたこともあり、若社長が大きな障壁に阻まれることもなかった。

困ったことがあれば遥人さんはおじさまに助言を請い、おじさまは真摯に向き合い、遥人さんに合ったアドバイスをした。

互いに敬意をもって助け合う二人は、見ていて羨ましい関係だった。



一方、私とおじさまが二人きりになる機会は減ってしまっていた。

おじさまは現役から退くと、力が抜けてしまったのか活力がなくなった。

ギラギラしたなにかを手放した代わりに、得も言われぬ温かい空気を纏うようになり、そのゆったりとした言動と何もかも包み込むような優しさに、耀も彩もすっかりなついた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ