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孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第40章 めまい

=Reika=

耀の出生の秘密が明るみに出ても、遥人さんは変わらない愛情を耀に注いでくれた。

そして夜は私を激しく抱いた。

しかしそれは、以前の甘く優しい抱き方ではなく、私が自分の所有物であることを確認するかのような行為に変わっていた。


その後、遥人さんには愛人ができ、夫婦間のコミュニケーションは、次第に少なくなっていった。

彼の方から不倫について進んで言うこともなかったが、ひた隠しにするような様子もないので、私よりずっと若い秘書室の女の子などと情交を結んでいることはうかがい知ることができた。

それでも私からは、何も言うことはできなかった。

遥人さんは私によって歪んでしまった家庭を今も大切にしてくれていたのだから。


隙間風が吹き込むような心地がする中で、私を癒してくれるのはおじさまとの思い出だった。

時折夢に出て来て、私を慰めたり愛してくれたりするのだ。




耀が大学受験、彩が中学受験を控えた年の夏は、立て続けに大きな台風が日本列島に上陸した。

気圧の変動のせいか、体調のすぐれない日が続いた。

不眠、食欲不振、だるさ、下腹部の痛み、頭痛、日替わりで体のいろいろな場所が悲鳴を上げたが、高齢になり引退した香さんの手助けもない。

私は二人の受験勉強の妨げになってはいけないと、普段通りを装って過ごしていた。

その日の朝は、どうしてもめまいが止まなかった。

私は床が目の前に近づいて来るような不安定な感覚に襲われ、ソファに身を沈め、秘書室に連絡を入れた。

そのころの遥人さんは、プライベートの電話に対応する余裕などない忙しさだったので、何かあれば秘書室に伝言を入れておくのが暗黙のルールになっていた。

秘書室に電話をかけると、いつものように秘書の浅木さんが出た。

私からかける電話は必ず浅木さんが対応してくれることになっているらしかった。

めまいがひどい、助けて、と浅木さんに言うわけにもいかず、日中診療所に行くので家を空ける旨伝えて欲しい、と頼んだ。

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