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正午、いつもより入念に身支度をした私は、遥人さんに軽い昼食を準備し、寝室へ行き、遥人さんの肩にふれて目覚めさせた。

遥人さんはベッドから起き上がるとすっきりと目覚め、シャワーを浴びて戻ると、先ほどまで二日酔いで布団にもぐっていたとは思えない程顔色も良くなり、背筋も伸び、以前以上に活力がみなぎっている様子に変わった。

その頃の彼にとっては、深酒と二日酔いが一種のリフレッシュだったのかもしれない。


「昨日は、悪かったね」

遥人さんは熱いコーヒーを一口飲んでから、きまりわるそうに微笑んだ。

「覚えてる？帰って来たときのこと」

「いや、まったく」

遥人さんは頬を指先で掻いて、私を上目遣いで見た。

「変なこと言ったり、やったりしたかな」

私は首を振り、微笑んだ。

後ろめたさにかすかに委縮していた首筋が、ホッと緩む心地がした。

あのキスに、遥人さんは気づいていないのだ。



玄関のチャイムが、迎えが来たのを知らせた。

ドアを開くと浅木さんが立っていた。

私を見るなり一瞬苦しげな表情を浮かべたが、背後にやってきた遥人さんに微笑んだ目を向けてから一礼した。


遥人さんが玄関を出て、浅木さんの先を歩いてゆく。浅木さんは、私に振り返ると深くお辞儀をした。



ドアを閉めて寄りかかり、鍵を閉めながら、儚く終わった浅木さんとのひと時に幕を下ろすように、私はゆっくり目を閉じた。