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孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第45章 新居

「ええ」

「もうお気づきですよね」

星名さんは自虐的にほほ笑んだ。どうにもならない相手を好きになってしまったという諦念が、口元をかすかにゆがめていた。

「遥人さんのこと、心から愛している?」

たずねると星名さんは唇を噛んでうつむいた。

「本当の想いを教えて欲しいの」

「はい。心から」

そういうと星名さんは深く頭を下げた。私は肩を抱いて起き上がらせた。

「聞いて欲しいの。星名さん、責めているのではないの。心から頼みたいのよ、遥人さんを」

「え?」

「一緒にいてあげてちょうだい」

「どういう、ことですか」

星名さんの目が、怯えで揺れている。

「本気なのよ。おねがい。そばに居てあげて。嬉しいときも、悲しいときも」

「…わかりました」

星名さんは理由はわからないながらも、私の強い意志を受け止め、ゆっくりと頷いて私の目を見つめた。

「待てる?わたしが、遥人さんのもとからいなくなるまで」

私が言うと、星名さんは打たれたように顔を跳ね上げて私を見た。

「奥様がいなくなるって、どういうことですか?そんなことを待つなんて、私はできません。わたしは、社長とおなじひとときをすごしていいと、奥様がおっしゃってくれた、それだけで、身に余ることで、ありがたいです。だって、私は既に奥さまがいるとわかりながら、好きになってしまった。本当なら許されない」

そこまで言うと星名さんは目を伏せた。閉じた瞼から涙の粒が二粒落ちた。

「けど、どうしたらいいかわからない。心が、離れてくれないんです」

私は星名さんを抱きしめた。

「今私が言ったこと、わすれないで」

星名さんはうなずいた。

「いい?ここの家具はあなたの好きなものでそろえて。それでいて、遥人さん、彩、耀、みんながくつろげるものを、じっくり選んでね」

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