テキストサイズ

孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第4章 参観日

=Reika=

小学校で三度目の参観日。スミレちゃんが張り切った様子で見に来ると言ってくれて、とても嬉しかったのを覚えている。



授業が始まり、教室の後ろにぞろぞろとお母さんたちが入ってくる気配がして、クラスの全員がそわそわして後ろを振り返った。

いままでスミレちゃんは仕事で来られなかったので、ひどく寂しかったけど、今日は違う。

ワクワクして教室の出入り口を見つめていたら、スミレちゃんが姿を現した。

ふわふわした長い髪を肩まで下ろし、優しいピンク色のジャケットに身を包んでいた。周囲の親たちとは一回り近く若く見えたけど、その佇まいは凛として自信に満ちていた。

「黎佳ちゃんのママ、超かわいい」

クラスメイトが口々に囁いた。スミレちゃんは教室中の視線を浴びながら、私に向かって花のように微笑んだのだった。

私は急に自分が誇らしくなった。授業中は自信満々に手を上げ、発言した。振り返るとスミレちゃんが嬉しそうにうなずきながら、肩のあたりで小さく手を振っていた。



授業参観が終わり、クラスメイトは保護者と一緒に帰って行く。


私は足早に進むスミレちゃんを追って慌てて昇降口で外履きに履き替えた。

走って追いかけると、スミレちゃんは私に振り向きもせず、校門の前に停まった見知らぬ男性が待つ赤い車に乗ってどこかへ行ってしまった。


「あれ、黎佳ちゃんのママは」

友達は口々に言った。私は親子連れが列をなして家路に向かう通学路を一人、マンションに向かって歩いた。

いったん空高く舞い上がった気持ちは、その反動で勢いよく海の底に沈んだみたいに重たくなった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ