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孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第2章 出会い

=Reika=


いちばん幼いころの記憶で、今もまだ思い出せるのは、母のやせ細った手の感触。

病室のベッドに横たわる母は、節々が丸く飛び出した鉛筆ほどの太さしかない指を一本ずつ折り曲げて、6歳の私の指を束ねるようにきゅっと握り締めた。

「黎佳…」

乾いてひび割れた唇をかすかに動かした直後、何本もの細いコードで母と繋がれていた機械が、心拍数の低下を知らせる落ち着きのないブザー音を響かせた。

母の手がほどけ、操り人形の糸が切れたみたいに白いシーツの上にぽとりと落ち、私の手は空中に取り残された。

「ママ、ママ」

寝巻の袖にしがみついて叫ぶ私を、病室に駆け込んできた白衣の大人たちが引き剥がした。

外の廊下に取り残された私の前で、突如あわただしくなった母の病室の扉が閉じられた。


そうやって私は一人になった。




そののち、私に鮮明な記憶を残したもう一つの手は、母のものとは全く違う手だった。

強く暖かく、深く抱きしめてくれる途方もなく優しい手。

大人の手は細く力なく頼りないと思っていた私に、違うんだよと教えてくれた手だ。

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