テキストサイズ

孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第17章 家庭教師・1

「そうだよ。それが拷問なんだ。純粋で優しくて一生懸命で、美しくて、そして最近は女性としての魅力も溢れ出している。そんな君をこれ以上近づいてはいけないと思いながら至近距離で見ていなければならないと言う状況が苦しいんだ」

「もっともっと距離が縮まればいいのね?そうしたら、苦しくなくなるのね?」

「それは望んではいけないことだ」

「どうして望んではいけないの?私たちがお互いに望んでいるのならそのとおりにすればいいのに」

「それはおかしいよ。きみは教え子、僕は家庭教師だ」

「そうよ。私は教え子、先生は家庭教師。そしてお互いを好き。おかしいことなんて全くないわ。むしろお互いを好きになれたなんて、幸運だと思わない?」

「幸運だなんて。歳は離れているし、こんな風に出会ってしまったことは僕にとってむしろ不運だ。普通に君が僕と同年代で、合コンかなんかで出会っていればよかった」

「年が離れていて、家庭教師として出会うと、だめなの?」

「だめだよ。教師と教え子が互いを好きだなんて。勉強に支障が出る」

「勉強はきちんとします。大好きな先生だから、ちゃんとできるわ」

「僕はちゃんと教える自信はないんだ」

「どうして?」

「君と目が合えば心臓がどきどきするし、指先の動きは他の行為を連想してしまう。唇も僕の衝動を揺さぶるし、その膨らんだ胸も、ぼくをざわめかせる。僕は君に触れたい欲求に邪魔されて勉強に集中できない」

「ならば、その欲求を満たしてしまえば、集中できるはずです。私の目も、指も、唇も、胸も、望むように欲しがってください。私は、先生が欲しがってくれることが嬉しいです。先生が好きだから」

───どうか先生、辞めないと言って。もう、大事な人が遠く離れてしまうのは嫌なの…


そう念じて先生をじっと見つめていたら、先生は机に腕を置いて体重を預け、顔を近付けた。

軽く触れるような接吻をくれたあと、先生は困ったように眉根を寄せて笑った。

「ごめん。僕は冷静じゃない。家で頭を冷やすよ。今日は帰るね」

「先生、待って」

先生は振り返らずに部屋を出て行ってしまった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ