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孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第22章 破瓜

=Masaki=

「羽月君、ちょっと」

社長室に羽月を呼び、ソファに座らせた。

「どうして黎佳への性教育を、御藤にまかせた?」

羽月はハッと私を見て一気に顔を紅潮させた。これが秘書室に入室以来24年目の羽月の初めての、そして最大のミスだと言えた。それを本人も察知しての反応だ。

「保健体育の分野かと判断しました」

「密室で二人きり、若い男性と性の話をする…これがどういうことかわかるか」

優秀な羽月がわからないはずがない。

羽月はふるえる膝の上に置いた両手をきつく握り、言葉を噛み殺すように言った。

「ならば、社長と黎佳さんがしていることはどういうことでしょうか」

私は打たれるような思いで背筋に緊張を走らせた。

「羽月君…きみはなにを」

「黎佳さんがブラジャーが必要な体になっているというのに、一緒にお風呂に入ったり、添い寝をされたり…普通ではないかと」

羽月の目の奥に怒りの焔を感じた。けれども、軽蔑ではない、彼女は嫉妬心に体を震わせていた。

「私に、できるわけないじゃないですか。全部気づいているくせに」

羽月は肉のない平らな痩せた頬に涙の粒をぽろぽろこぼした。感情をむき出しにした羽月を初めて目の当たりにし、私は驚きで硬直した。

「どうしてあんな小さい女の子がいいんですか。つぎつぎと現れる女性を見てきました。けど…今回ばかりは常軌を逸しています…。それに、社長はひどいです。私はずっとあなたに思いを寄せてきたから、他の男性も知らずにここまで来たんです。なのに社長は少しも私を…」


自分に気があることは薄々感じていたが、職務上あまりに距離が近いのでより近い関係になることは避けてきた。

それは羽月も同じだと思って安心していた。互いの好意が、信頼につながっていると信じていたのだ。


私は私で、他の女性との関係がいくつもあったから、羽月にももちろん、男性との関係はほかに沢山あるはずだと思っていた。

まさか46歳にもなって男性とのかかわりを持たず貞操を守り続けてきたとは思いもよらなかった。

「社長以外に、好きだって思えないんです」

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