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雪女

第3章  夏休み

 あられグループの男子7人、加代を含む女子5人は、あられの海の別荘に招待された。

 一応、受験勉強の強化合宿という名目だ。

 僕も誘われたが家庭の事情で参加できない。これでも一応神職として神祭(じんさい)の末席に連なるのだ。


 それに調べたいこともあった。


 加代から連絡があったのは15日の朝だ。

 宮田と中家の二人が海で溺れて死にかけたという。

「二人とも、今はもう大丈夫……でもないか。すっかりしょげちゃって、事故になったらあられちゃんに申し訳なかったって言ってる」

「ふたりとも泳ぎは得意だったよな」

「だからさ、余計にね、良いとこ見せたかったんだわ」

「あられは? どうしてる?」

 何よりそれが気になった。


「それが法事があるとかで、昨日そちらに帰っちゃったの。用事が終わったら戻ってくるって言ってたけど」

「加代。帰ってこい。杉下にも声をかけて、みんなを説得して帰ってこい。もう海には近づくな」
「えー。皆にそんなこと言うの、絶対無理だよ。そんなことできるのあられちゃんしかいないよ」

 そうだろうな。とは思っていた。でも兆しが現れた以上このままにはしておけない。 確かめるべき時期がきたのだ。

 加代からの電話を切った僕は、御幣(ごへい)を仕込んだ結界を作る縄を身体に巻き付け、上から狩衣(かりぎぬ)を着ると見返り坂に向かった。

 見返り坂の手前にはバス停が有り、以前その一部を姫原女子校のスクールバスが使っていた。そのバスはコースが変わり、今、坂道は歩行者だけの指定通学路だ。

 バス停を通り過ぎた辺りから、なにかがついてくる気配がした。

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