碧い雨の夜に…
第1章 【衝動的に……】
エレベーターに2人きり。
両手を掴んで指先にハァーと息を吹き掛ける。
かじかんでるから温めてたら目が合って。
ん?とアイコンタクト。
「リセちゃんだ………本物」
「え…?」
「やっと会えたから嬉しい」
それは私も同じだよ、と言い掛けてやめた。
何かガッついてるかなって思って。
黒のストレートヘアが似合ってて余計美貌を引き立てている。
「最初ビビってなかった?私じゃなかったらどうしてたの」
「すぐにわかったよ?だってこの髪……インナーカラーの青、リセちゃんだって」
うん、もう一度会えるまでは変える気なかった。
覚えてて欲しかったから。
「あ〜良かった、今日か明日には赤にしようかと思ってたから」
「うん、でもすぐにわかるよ?リセちゃんだったらすぐ気付く」
エレベーターが階に着いて自然と手を引いて歩き出す。
「何色でも?うっそだ〜悪い人に騙されないでね?何か心配になってきたわ」
「リセちゃんは悪い人じゃないから大丈夫でしょ?」
ドアの前で立ち止まる。
鍵を開けながら
「お持ち帰りしてるのに?悪い人だよ、私は」と冗談交じりに返してドアを引いた。
なんてね、と笑ってみせたけどジャンパーの裾を抓んで動きを止めてくる。
靴を脱いで一段上がったから目線がほぼ同じになった。
「それでもボクはリセちゃんに会いに来るよ…?ダメ、かな?」
踏ん張れ、気張れ、自分。
相手は女の子。
中身は男だけど全然そんなんじゃないから。
胸の真ん中鷲掴みされるな。
ギュン…て高鳴るな。
「ん、良いよ」って目を逸らして内側の鍵を締めた。
どうぞ、と部屋に招き入れるのはこれで2回目。
お邪魔します、と靴を揃えて入ってくる。
え、待って。
ずっと考えてたシチュエーションだよ。
もう一度会えたらなって思ってた。
またこの家に来たら良いのにって。
今それが実現してる。
最初に会った時より女度増してない!?
女から見てもドキドキするくらい整い過ぎてた。
「ご飯食べた?」
まだ夜の8時前。
返事より先にナオのお腹が鳴った。
ウーバーで宅配して飲むことになる。