碧い雨の夜に…
第5章 【不変的に……】
男女のモデルでバッチリカメラ目線な2人は女性が男性を胸あたりで抱き締めているかのような。
女性の手にはアクセサリー、その手を掴んでいる男性の手にもアクセサリーが。
新作ファッションを身に纏い、かなりの密着ショット。
正直、私も見惚れるほどの広告だった。
「男の人誰?めっちゃイケメン」って、もう皆にバレちゃったじゃん。
今回はメンズとして撮影したんだね。
思わずスマホで撮ってしまった。
女性は誰だか知らない。
けど、超絶美人。
凄く………似合ってる。
抱き締められている男性は、
他の誰でもないナオだ。
メンズの時のナオは半端ない色気を醸し出している。
こういう世界でナオは生きてるんだ。
凄まじい努力の積み重ねだってことは近くで見てきてわかってるつもり。
でも、何だろ。
プロに囲まれてプロになっていくナオが今、初めて遠くに感じた。
知らない顔をしている気がした。
そっか、こっちの世界の人だったよね。
家であんなワンコだから忘れてた。
着実にプロになってんじゃん。
スマホ向けて撮ってる人、たくさん居るよ。
格好良いって言ってる。
今日、この広告を見て、何人の人がナオのこと検索するんだろうね。
わかるよ、見慣れてる私ですらときめいてる。
もう一度、恋に落ちているような。
ダメ、その人私のですって言おうか?
なんてね。
ちょうどその時携帯が鳴ってナオからだった。
__理世ちゃん?今、どの辺?
「あぁ………○○駅着いたとこだよ、もうすぐ帰るけど」
__そっか、迎えに行っても良い?
「どうしたの?ナオはもう家?」
__うん
「何?寂しくなった?」
__○○駅ならもう見たでしょ?今日から載るから……前に言ってた広告の仕事
「あ〜うん、今見てたところ」
__ど、どうですか?
「そうだね、見てたと言うより見惚れてた…かな」
__やっぱり迎えに行くね?駅前で待ってる
「大丈夫?変装して来なよ?結構、今、騒然としてるよ?皆スマホで撮ってる」
__え?そうなの?いや、大丈夫、理世ちゃんに1秒でも早く会いたいから