碧い雨の夜に…
第2章 【本能的に……】
「寒くない?」っていつも優しいね。
うん、寒くないよ。
寧ろホカホカしてる。
「寂しくない?」
どうして?隣にナオが居るのに。
笑って「寂しくないよ」と答えたら
「ボクは寂しい」って、やっぱりさっきの見て拗ねてるのかな。
立ち止まるナオに顔を上げると歩道の真ん中でチュッとキスされた。
何事もなかったかのようにまた歩き出す。
「口が寂しかった」って甘い顔。
ねぇ、私のトリセツこっそり読んだでしょ?てくらいドタイプなんですけど。
今度大会があるからちょっと遅くなったりすることもあると伝えた。
ギュッと手を握られて目を見て「わかった」と答えてくれる。
寂しいのかな、そう思ってくれてると嬉しいな。
「リセちゃんは昨日のボクの方が好きみたいだね」
唐突に何を!?
頭を掻いて「失敗したかな」って言う。
「何で?そんなことないよ」
「だって全然こっち見ないから」
「ち、違う違う、直視出来ないくらい格好良いんだよ」
「じゃ、こっち見て」
顔全体が熱い。
自ら目を隠してチラ見する。
「ちゃんと見てよ」ってすっごい照れてんの、わかってよ。
「見たよ、早く帰ろう」と袖をクイクイ引っ張る私にまだ拗ねてる。
電車に乗ってもホラ。
皆、ナオのこと見てるよ。
“バリ格好良い”とか言われてる。
背も高いし顔小さいし目立つ。
ドア側に向く私と後ろで指絡めながら流れる景色を見ていた。
「リセちゃんこっち向いて」って耳元で言われる。
振り向くと身体ごと向かされて金髪青メッシュの髪を撫でてきた。
見上げる角度も丁度良い。
ダメだ、したくなる。
だから横向いたのに真っ直ぐ向けられる。
「今日もいっぱい踊った?」
「うん、汗掻いたから早くシャワー浴びたい」
「動画撮った?後で見せて」
他愛もない話だけど、かなり至近距離で話してる。
車内が揺れてまた近付く。
さり気なく腰に手回ってるし。
「近い」ってそっと伝えたら首を振って離れることはない。
汗掻いてるから……も耳元で
「リセちゃんの匂い好き」と言って話にならなかった。
周りの乗客からはキスするんじゃないかって思われるほどの距離感だから「今はダメ」と腰に回る手を握り横に立った。
もうすぐ降りる駅だしね。