秒針と時針のように
第4章 認めたくないこと
「あれ? 拓、パンは?」
「忍の貰えるわけないだろっ」
「あ、じゃあ……あのメロンパンだけだったのか。気の毒に」
不満げに立ち止まった拓を振り返る。
手に持ったメロンパンを揺らして。
「はいはい。俺の半分やるよ」
「いよっしゃああ!」
「うっせ。やっぱあげねえ」
「嘘だろうがっ!」
耳を塞ぎながら歩く。
必ず追いかけてくる拓。
本当に、信じられないくらい平和だなって思ったんだ。
これが。
空になった袋を丸めて空を見上げる。
そろそろ裏庭も寒くなってきた。
「今度からコート持ってくるか?」
「だめ。そしたら俺午後の授業ぜってえ出なくなる」
「一緒にサボればいいんじゃね?」
足を組んで寝転がる拓が笑う。
「んなことしたら公認で変な噂立てられるっての」
ガバッと拓が起き上がった。
びくりとした俺が強ばる。
だって、嫌に真剣な目をしてたから。
「なんだ、よ」
「忍は嫌?」
黄金色に反射する瞳がゆっくりこちらを向く。
緩慢に。
何かを躊躇うように。
それに、どんな顔して答えればいいんだよ。
馬鹿が。
「……何言ってんだよ、てめえは」
「真面目に聞いてたりして」
風が止まる。
袋が飛んでいく。
「昨日の賭け」
「え?」
表情を変えないまま立ち上がる俺を拓が見上げる。
「一個使う。その質問、二度とすんな」
素早く踵を返して校舎に向かう。
唇が震えている。
やばい。
表情が作れない。
足が速くなる。
あれ。
なんでだよ。
校舎に入ったところで立ち止まる。
一人だった。
振り返る。
なんで。
いつも追ってきたのに。
なんで。
拓。
いたら煩いけど、いないと不安になるんだよ。
「なに気にしてんだよ……来いよ、馬鹿」
チャイムが鳴る。
一人で教室に向かうのなんて。
いつぶりだ。
あの言葉を聞いた瞬間の拓の顔が焼きついて離れない。
見たことがない。
いや、一回だけ……
あのジャングルジムから飛び降りて怒ってた時の。
親友、か。
今は?
今も、親友か?
頭を掻く。
わかんねえ。
「忍の貰えるわけないだろっ」
「あ、じゃあ……あのメロンパンだけだったのか。気の毒に」
不満げに立ち止まった拓を振り返る。
手に持ったメロンパンを揺らして。
「はいはい。俺の半分やるよ」
「いよっしゃああ!」
「うっせ。やっぱあげねえ」
「嘘だろうがっ!」
耳を塞ぎながら歩く。
必ず追いかけてくる拓。
本当に、信じられないくらい平和だなって思ったんだ。
これが。
空になった袋を丸めて空を見上げる。
そろそろ裏庭も寒くなってきた。
「今度からコート持ってくるか?」
「だめ。そしたら俺午後の授業ぜってえ出なくなる」
「一緒にサボればいいんじゃね?」
足を組んで寝転がる拓が笑う。
「んなことしたら公認で変な噂立てられるっての」
ガバッと拓が起き上がった。
びくりとした俺が強ばる。
だって、嫌に真剣な目をしてたから。
「なんだ、よ」
「忍は嫌?」
黄金色に反射する瞳がゆっくりこちらを向く。
緩慢に。
何かを躊躇うように。
それに、どんな顔して答えればいいんだよ。
馬鹿が。
「……何言ってんだよ、てめえは」
「真面目に聞いてたりして」
風が止まる。
袋が飛んでいく。
「昨日の賭け」
「え?」
表情を変えないまま立ち上がる俺を拓が見上げる。
「一個使う。その質問、二度とすんな」
素早く踵を返して校舎に向かう。
唇が震えている。
やばい。
表情が作れない。
足が速くなる。
あれ。
なんでだよ。
校舎に入ったところで立ち止まる。
一人だった。
振り返る。
なんで。
いつも追ってきたのに。
なんで。
拓。
いたら煩いけど、いないと不安になるんだよ。
「なに気にしてんだよ……来いよ、馬鹿」
チャイムが鳴る。
一人で教室に向かうのなんて。
いつぶりだ。
あの言葉を聞いた瞬間の拓の顔が焼きついて離れない。
見たことがない。
いや、一回だけ……
あのジャングルジムから飛び降りて怒ってた時の。
親友、か。
今は?
今も、親友か?
頭を掻く。
わかんねえ。