もうLOVEっ! ハニー!
第7章 彼女の横顔
ノックが鳴る。
鳴海が返事をすると、隆人が入ってきた。
「ばんわーん。あ、かんなもいたんだね」
「こんばんは。お邪魔してます」
「酔っぱらってんの? あたしも誘えよなー」
ふにゃりとした笑みを浮かべて隆人が近づく。
手に提げた袋を鳴海の膝にぽんと置いた。
「なにこれ」
「先週申し出リストにあった備品一式買っといたからね」
がさりと中を見て、彼女は溜息を吐いた。
「お土産の一つくらい入れればいいのに」
なんでしょう。
ふてくされた子供みたいな顔のなる先生初めてです。
酒の臭いを漂わせる隆人が、鳴海の髪を軽く撫でた。
「……ごめんね?」
「セクハラっ」
ばっと手を払う横顔が紅に染まる。
囁いた唇を持ち上げながら隆人は離れた。
いつもの管理人という空気じゃなくて、なんだか男の人って感じです。
向かいの椅子に座り、頬杖をつく。
「そうそう。かんなが華海都サークルに入ったわよ」
「ふうん。歓迎するよ、王女様」
見つめられるとドキドキしてしまいます。
私は頭を下げるしかできませんでした。
「それで、どしたの」
来室の理由を尋ねられていると気付くのに数秒かかった。
「あ……えと」
「女同士の話に首つっこまなーい。色々あんのよ」
「僕は中性だけど?」
「あのねえ」
このお二人の会話は癒されます。
本当に夫婦みたいです。
こんな夫婦ならいいですね。
遠慮がなく、けどお互いのことをよく知っているから傷つけはしない。
素敵な関係。
私の両親とは、いったい何なんでしょう。
普通な家庭。
そんなもの築こうとすらせず。
お二人が両親ならよかった。
そしたら、きっと……
いえ、お二人はここで寮生全員の両親となっているのでしょう。
「ちょっと、かんな?」
「ぅはい!?」
いつの間にか目の前に隆人が来て手を振っていた。
「ぼーっとしてると襲われるよ?」
「えっ、えと。あれ? なる先生はっ?」
部屋を見渡してもさっきまで座っていた椅子に彼女の姿はない。
突然静かになった気がする。
コツコツと向かってくる足音に緊張してしまう。
隆人が目を細めて肩に手を置くと、小さく息を吸って耳元で囁いた。
「……キスしていい?」
首筋を撫でるように濡れた声。
「あ、の……」
必死に顔を背けていても身が硬くなってしまう。
鎖骨に手が添えられる。