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もうLOVEっ! ハニー!

第7章 彼女の横顔

「はいあと一分! ほらほらぁ、もっと食えよ男どもー」
 楽しそうに煽る鳴海の元に隆人が近づく。
 彼女の耳元に身をかがめ、低い声で言った。
「今更だけどさ、景品変えない?」
「はあ? なんで」
「あれ決めたのって入学式前でしょ。かんなとつばるがまだサークルに入ってない時」
「だからなに? はい、あと四十秒!」
 隆人がちらりと生徒たちを見て首を振る。
「美弥ならともかく、他の男が勝ってかんなを選んだら管理人としては不安なの」
「何言ってんの、それこそ今更じゃない? 毎日同じ屋根の下で暮らしてんのよ? 確かに二人きりの一夜にはなるけど、監視カメラあるから異常があったらすぐ行く予定でしょ。毎年それで成立してきたんじゃない? はい、十秒! ラスト気張れー!」
 鳴海は隆人の本心に気が付いていなかった。
 酔っていたとはいえ、かんなに迫った事実も。
 隆人はこんなにも不安を覚える自分が妙で仕方なかった。
 これまで確かに普通にこの行事もやってきた。
 ノリで男同士で泊まったり、既に恋人になっている二人になることもあった。
 何故か僕が選ばれた時もあった。
 高校生にして不純異性交遊を進めるような企画に学園長から目をつけられかけたこともあったが、今まで不祥事は起こしていない。
 しかし、今年はどうも事情が違う。
 入寮から見ていたところ、今回のかんなを取り巻く状況は異常と云ってもいい。
 始めは美弥と陸だけだと思っていた。
 それがつばるの入寮と同時に随分と私情が絡み合ってきた。
 ちらりとかんなを見る。
 尚哉の隣でマシュマロの串を咥えて楽しそうに先輩達を見る彼女を。
 ここに村山がいたら状況は違っていただろうか。
 わからない。
「しゅーりょぉー! はい、手止めて! 数を確認するからっ」
 一斉に噎せて水を一気飲みする彼らを眺める。
 皆勤賞の錦岳斗は流石に強い。
 初出場にして食らいついていたつばるも見ものだった。
 恐らくどちらかが優勝だろう。
 手にしていた封筒を見下ろす。
 コテージの鍵が入っている封筒を。
「僕は馬鹿かな……」
 自嘲気味に呟いて集合している皆の元に向かった。

「合計三十七個を食したチャンピオンは、岳斗ぉおおおお!」
 鳴海がレスリングの審判よろしく彼の手を振り上げる。
 他の選手たちはぐったりと台にもたれかかった。

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