もうLOVEっ! ハニー!
第8章 優越鬼ごっこ
それはそれはとても素敵な光景。
蘭は薄く微笑みながら階段に座って、人形を撫でていた。
「ね。ベリテーネ。面白いわ」
その視線の先には、かんなと管理人。
さっき一瞬現れた美弥はすぐに消えてしまった。
耐えきれなかったのかしらね。
雄のふりして繊細で。
可愛いんだから。
その前の二人のキスから見ていた蘭は、四月からの寮での変化とリンクさせて人物相関図を描いていた。
中心はもちろん松園かんな。
あなた主人公だもの。
えぇ。
だからハッピーエンドに向かって選択が始まるのでしょうね。
でもそれには誰が悪魔か見破らなきゃ。
人狼ゲームと同じ。
さあさあ。
悪魔はだあれ?
その優しい手に騙されてはつまらない。
けど預言者になるつもりもない。
少女漫画の先行きを読者が決められるんじゃ興醒めにも程がある。
予測不能な展開はどこ?
ああ、ゾクゾクする。
エリを巡って美弥が荒らした時よりずっと快感だわ。
楽しみでたまらない。
人形の手をぎゅっと包む。
私は決して参加しない。
だからいいの。
そうね。
管理人のように異分子となっても面白いのかもしれないけれど。
どうかしら。
あのお茶会は失敗だったわ。
お陰で相関図は大体埋まったけどね。
「なにしてん」
「あら。いま貴方のこと考えてたのよ、錦岳斗くん」
「気色悪いわ」
トントン、と降りていった岳斗の前にあの二人はいない。
もう出ていっちゃったのね。
目撃したならどうなったのかしら。
ああ、惜しいわ。
そろそろ場所を移して、他の展開を見に行かなくちゃね。
奈己と亜季はまだ出てないはず。
あの二人も何年あんな無様なこと続けるのかしらね。
さっさと壊しちゃいたい。
奈己を焚き付けるべき?
それともルカ?
階段を登りながら考える。
峰と茜が掴めない。
過去に何かあったみたいだけど。
茜は私とは違う理由で傍観者。
なら、ちょっと話してみようかしら。
誰が選ばれると思う?
私はそうね……
まだわからない。
コンコン。
「ふあ~い?」
茜が眼を擦りながらドアを開ける。
「始業まで十分よ?」
「え? うそ」
「だから、一緒にサボりましょ」
「だから蘭ちゃんだいしゅき」
茜はケラケラ笑いながら蘭を部屋に招き入れた。