もうLOVEっ! ハニー!
第9章 本性探し
ほらまた受け身。
もう一人の私が蔑む声がする。
かっとなって、美弥さんの肩を押しました。
離れた唇から吐息が漏れる。
美弥はそれを払うように唇を手の甲で拭った。
その仕草にズキンと胸が痛くなる。
「そ、か。あの時と今とじゃもう、違うんだね。かんな。ボクとのテスト期間は終了。次は? ガク? それとも奈己?」
「……なんでそんなこと言うんですか」
涙が出そうなほど胸が締め付けられる笑み。
美弥はその笑みのまま囁いた。
「なんて惨めなんだろうね。ボク」
かける言葉がなかった。
たった十数年の生の中で、こんなにも傷ついた人に何を与えれば良いのかわからなかった。
なかなか酷いタイミングで扉を開いてしまったらしい。
柳隆人は目の前の二人の少女の空気を一目で読み取り、後悔した。
もう一章読んでから開ければよかった。
しおりを挟むのも惜しんで出てきたのに。
「にゃはは。おはよん、隆にい」
「どうしたの? 眼真っ赤だよ二人とも」
かんなは俯いたまま。
「んにー。なんでもないよ。ただね、隆にい。かんなをぎゅーってするのはボクだけの特権にしといてほしいな」
昨日のことか。
見ていたのか。
別段動揺もなく、頷く。
「お前くらいじゃないか? 出来るの」
「……な」
その時ぼそりと吐いた悪態は、かんなの耳にだけ届いていた。
「……卑怯な大人」
味覚と言うのは勝手なもので、気分に凄く左右されますね。
砂みたいなサンドイッチを頬張ってから、授業にれっつごー。
足は金より重いです。
その価値は鉛より低いですが。
またも一人で玄関を出る。
美弥さんは、食べ終わって茜先輩に用があると先に行ってしまいました。
ぎこちなくてぎこちなくて。
歓迎されてた頃に戻れたら良いのに。
なにも考えず。
皆が初めてを共有して。
「浮かない顔してるね」
「陸さん!」
後ろからぽんと頭を撫でた陸は、天使のように微笑んで靴を取り出した。
「良かったら一緒行く?」
「いいんですか?」
「かんな元気ないから」
「そう見えますか」
「まあ全部後付けだけどね」
きょとんと陸を見上げる。
困ったようなはにかみで、こう答えられた。
「ガク先輩の噂聞いちゃったから。こばるから」
忘れかけてた頭痛の奇襲です。