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もうLOVEっ! ハニー!

第9章 本性探し


 走り書きを脳に刻んで破り捨てる。
「使わせていただきます……」
「正当な手段なんて存在しない。卑怯で構わないんだよ、かんな。相手も十分卑怯なんだから」
 まるで美弥の言葉に返すように。
 この人は、どこまでなにを見抜いているんでしょうか。
「映像は携帯に移してから確認すること。誰が見てるかわからないからね。最近は怖いよ。自動キャプチャシステムが組み込まれて教師のPCからデータが流出した事件もある。この寮にそんなハッカーじみた生徒がいるとは思ってないけどね」
「隆人さんは、いつもこうなんですか……?」
 ここまでやってくれるのか。
 一生徒のために。
「うん? かんなは王女だからね。特別」
 そう笑って出ていきました。
 閉まった扉に叫びたくなる。
 でも何を言いたいのかもわからない。
 ただ、叫びたかった。
「あははは……もう」
 床に崩れ落ちる。
 頭が熔けそう。
 熱じゃない。
 ぐねぐねと変形して、押し潰されて、流れ出てきてしまいそう。
 誰かに無償で抱き締めてもらいたい。
 母さん。
 ああ、バカ娘。
 すがる相手など生まれたときからいないくせに。
 携帯を取りだし、インターネットに繋ぐ。
 くだらないニュースで脳を埋めたかった。

 翌日、一人で登校した私の上履きには何も異常はありませんでした。
 まあ同じ手口を二日連続はあまりないので、それほど驚きませんが。
「おはよう」
「あ。ガク先輩」
「なんや。一人か」
 爽やかな笑顔で、私の背中をぽん、と。
 優しさがじわり。
「昼飯一緒食べん?」
「今日ですか? 空いてますが」
「迎えにいくわ」
「そんな。私が行きます」
「同期に見せたくないねん。んなかいらしい子」
 あうう。
 今度は地に埋まりたい。
 この人の胸に飛び込めたら、楽になるんでしょう。
 わかっているのに。
 三年のクラスの方に向かう岳斗に手を振る。
 目立つなあ。
 あの背とルックスと表情。
 なのに、どうして私なんでしょうか。
「昼休みにな」
「はい!」

「はいじゃねえですよ……」
 三限が終わった時点で胃痛を感じながらノートに突っ伏す。
 こんなの返事を聞かれるに決まってるじゃねえですかこの阿呆。
 何故わざわざ自ら二人きりに。
 時計を一瞥して、眼を瞑る。
 眠気が忍び寄ってくる。
 起きたら全部解決してれば良いのに。

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