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もうLOVEっ! ハニー!

第9章 本性探し


 弁当派かパン派かと問われれば、パンです。
 あの綺麗なキッチンもたまあに使いますが。
 毎朝作るなんて想像も出来ません。
 だから……
「わ……わあ。なんじゃこりゃ……」
「ぶははっ。おもろい反応やな」
「いや。凄すぎますよ。先輩。毎日作ってきてるんですか?」
 岳斗が広げた弁当を前に、つい正座してしまいそうになる。
 彩り。
 量。
 バランス。
 長方形の箱に美しく並んだ料理。
「この、ぶりの照り焼きとか。ええっ? つくねハンバーグですよねこれ。どうやって作るんですか……わー、卵焼きにネギまで散らしてある」
「んふっ、ははははっ。あはは、腹痛い。あかん、もう言うわ。おもろすぎるから。これ汐里兄貴に作ってもろてんねん。いつも」
「ええー!? なん……びっくりしたぁ」
 爆笑する岳斗につられて笑ってしまう。
 中庭のベンチでお互い止まるまで笑い合った。
「いやー。悪い。久々にこんな笑ったわ」
「私もです」
「っくく。第一声が、なんじゃこりゃーだもんな」
「……記憶から消します」
「保存します」
「ガク先輩っ……」
 こめかみに人差し指を押し当ててニヤリと。
 ああもう。
 なんでこの人とはこんなに話しやすいのか。
 キャンプの夜を思い出す。
 こんな風に沢山笑った。
「汐里さん、作ってくださるんですね」
「司の世話しとるからなー」
「羨ましい……」
「ぶり食べるか?」
「良いんですか?」
「ええよ」
 そう言って何故か二本入っていた箸の一つを渡された。
 それはそれは蕩ける美味しいぶりでした。

 サンドイッチをかじりながら、横顔を見る。
 男子にしては白い肌と、耳に並んだ四つのリングピアス。
 銀が二つと、銅と、紺。
 目線に気づいた岳斗が左手で私の髪に触れた。
「ひっ」
 耳に髪をかけられて、首筋に触れた指にぞくっとしてしまった。
「かんなは着けんの?」
「ピアスですか? やです。穴空けるの怖いですし。アクセサリー興味ありません」
「へえ。意外に似合うんちゃう?」
 ぱさ、と離れた指から髪が肩に落ちる。
 この人って結構タッチしてきますよね。
 嫌な感じはしないですが。
 もぐもぐとタマゴサンドを噛み砕く。
 あ、そういえば少しは味がする。
 指についたマヨネーズを舐めて、ハッとする。
 昨日とはまた違うんだ。
 毎日変わる。
 ころころ。

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