もうLOVEっ! ハニー!
第9章 本性探し
食べ終わって、なんとなく脱力する。
ベンチに背を預けて、眠たくなる太陽の光を細目で眺める。
「このまま寝れたら最高やな」
「本当ですね……」
「五限公民や……」
「おしまいですね」
「ああ、終わった」
「先輩て得意科目なんですか?」
「んー、僅差で数学か。化学か」
「理系なんですね。尊敬します」
「かんなはその辺苦手なんか?」
「数式公式方程式大嫌いですね」
「その三つ並べるほどやもんね」
「先輩もうすぐ受験なんですね」
「死ぬほど避けたい話題やなあ」
「皆さん大学進学するんですか」
「さあ。うちは変人揃いやから」
ぼそりと呟いて、岳斗は両腕を思いきり真上に伸ばした。
眠気を払うように。
私も肩を後ろに引き下げて胸の辺りを伸ばす。
チャイムまであと七分ほど。
なかなかあっという間でした。
立ち上がった私を、ガク先輩はベンチからじっと見つめました。
「……先輩?」
「俺、本気やで」
ザアッと風が校舎の間を吹き抜ける。
砂が舞い、木々を揺らした。
私を急かすように。
答えろと。
「……私、まだわからないんです」
声が震えてしまう。
卑怯で、情けなくて。
「自分の気持ちが全然わからなくて、変なこと沢山して、傷つけて……色んなこと言われて、嫌なこともされて、だから、まだ整理できなくて」
俯いて言葉を綴っていると、頭を抱かれた。
きゅ、と背中も。
先輩の唇が髪に触れているのを感じる。
「ええよ。ごめんな。考えさせて」
よしよしと背中を撫でられる。
「先輩、悪くないっ……」
「まあー、とりあえずあれやんな。眠いまま五限行ってー、掃除してー、ホームルーム終わったらぁ、返事聞かせてもろうかなー」
「早い……」
「くっくっ、早いか。せやなあ。早いな」
笑いながら私を解放し、廊下に誘う。
優しさがじわり。
この人の優しさは簡単に心まで沁みてくる。
泣きたくなるほど。
「かんなの泣き顔はそそるな」
「えあっ?」
ばっと口元を覆う。
油断していたせいか、そんな他愛もない言葉に耳まで熱くなった。
ぱちぱちと瞬きしてしまう。
「んふはっ、やめえや。可愛すぎ」
熱い。
岳斗が手を振って階段を上っていったあとも、立ち尽くしてしまった。
私って、なんて……
わかりやすいバカなんだろ。
それなのに、本心はわからない。