もうLOVEっ! ハニー!
第14章 思惑シャッフル
その夜は、生きてきた中でも自責の念がダントツに強まる夜だった。
感触の違うベッドに横になり、早乙女つばるはカーテンの隙間から漏れてくる月光を眺める。
本来なら、天体観測をするはずだった。
いや、本来なら同窓会強行だったか。
苦く自嘲して三時間前に思いを馳せた。
午後六時。
岳斗と美弥、二年生がこばるの部屋で会議を始めた。
「当人のおらんところで話すんは気悪いけど、流石に無かったことには出来ひんからな」
「ボクはつばると薫は強制退寮以外にないと思う。薫はともかく、つばるは許せんっ」
「いじめの主犯格って、本当かな……」
マリケンが不安そうに呟き、尚哉が首を掻く。
「マジだとしたら、俺もつばるは無理ですよ。入寮してから向かいの部屋に住んでたんでしょ。いじめられてた側が声上げられるわけないのに……」
悔しそうな声色に温度が下がる。
「暴露を聞いた身としては辛すぎるな」
陸の言葉を聞いて、二人の身体関係を知る岳斗は、それが同意の上でなくこの寮で行われた可能性を示唆しようか考えたが、被害者しか傷つかんな、と口を噤んだ。
弟の話にこばるは口を出せずにいた。
ベッドに座った美弥がドンドンと枕を殴る。
「とーにーかーく! ボクは隆にいが甘い決断するようなら理事に直談判するよっ。署名だって集めちゃる」
「今身の回りが大変な美弥先輩が無茶する必要ないです。私たち二年が動きますよ」
「あっは! キスフレ如きがボクの行動力を止められると思うなよ、ルカ」
挑発的に両眉を上げて美弥が反論する。
「ちょ、ちょっとそういう話は良くないです」
奈己は無言で壁にもたれていたが、隣の亜季が焦って叫ぶのでため息を吐いた。
「待ち待ち。話を散らすなや。実際何があったんかは俺らには知る由もない。この寮におるんは全員ワケありやろ。首突っ込まれんのがタブーなんはわかっとるはず。俺なんかどっちかゆうといじめてた側やしな」
でしょうね、とこばると美弥が目配せする。
「ほんで、気をつけるんはセカンドレイプだけはせんっちゅうこと。私刑もな、美弥」
「それはボクの自由でしょ」
バチンと火花を散らして美弥は腕を組む。
「隆人さんからアナウンスが出るまでは誰も行動しませんよ。明後日にはわかる話でしょうし」
奈己が皆の熱を追い出すように、さらりとまとめる。