もうLOVEっ! ハニー!
第15章 何も叶えぬ流星群
唾液が零れそうになるのをどちらともなく飲み込んで、脳まで響く水音に思考が飛ぶ。
胸元に両手を押し付けて抵抗しているけれど、その力がどんどん弱まっていく。
鼻を擦り付けるように顔の向きを変えて、貪るように何度も舌を押しつけなぞる。
かんなの高い声が鼓動を上げていく。
息を荒らげて離れてから、顎の唾液を手の甲で拭う。
呆然とするかんなに、なんとか笑顔を作る。
「こんなことしたん?」
さらに追い詰められて涙が滲む。
ああ、可愛い。
困った顔がほんまにかいらしい。
ぎしり、とベッドを軋ませて、かんなは怯えるように壁際に後ずさる。
「す、するわけない……です。ただ……」
「ただ? なにしたん」
言ってしまえば楽になるのに言えないのは、同じ方向のことをしたのだろう。
かんなも気づいたのか、ハッとしたように両手で口を押えた。
ポロポロと涙も伝う。
「い、え……尚哉さんは、ただ拒絶されて……」
「あー。そかそか。かんなから試したんか」
今までかけてきた優しい言葉が上塗りされていく。
脱力していた目が警戒色に染まってる。
我慢やって。
追い詰めてどないするん、ボケ。
近づこうとする自分の脚を手で制して、トントンと指で太ももを弾く。
「俺が告白する前? 後?」
追撃してしまう口が止まらない。
かんなは心臓の鼓動に苦しむように肩を上下させて呼吸している。
「後やろな」
くーが先行するわけない。
「で、でも一ヶ月以上前の話で……」
「いつ俺のもんになるんやろ」
一番出したらあかん本音が出てもうた。
かんなも幻聴だったかのように目を丸くする。
優しい先輩に戻らんと。
「ほんまは待ってたいけど他の男にとられんのも、触れ合われんのも無理なんよな……」
ああ、せやね。
簡単なことだったわ。
キスは受け入れとるからね。
おそらく、くーと違うて。
他の男が脳裏にこびりついているのは、可愛い後輩という点も相まって煩わしい。
喫茶店のアイツのいい子なこと。
「決め手がないんやったら……」
ベッドの端のかんなに近づき、両手を壁について見下ろす。
すっぽりおさまった怯えた小動物。
次の言葉を息を飲んで待っている。
「キス以上を確かめよか」
息を飲む音がした。