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もうLOVEっ! ハニー!

第15章 何も叶えぬ流星群


 八月最初の土曜日。
 屋上に集まった十人は、それぞれ缶ジュースと缶ビールを片手に、ブルーシートの上で空を見上げた。
「最初に見つけた人には汐里からマイスにゴディバチョコトッピングしちゃうってよ」
「今のは隆人の冗談だぞー。全員やるぞー」
 オレンジジュースをごくごく飲みながら、手毬は必死に空中に視線を巡らせる。
 その隣で尚哉は片耳にイヤホンをつけ、星空をテーマにしたプレイリストを楽しみながら夜風に吹かれる。
 岳斗はフェンスにもたれかかり、美弥と談笑する。
 それを横目につばるがかんなに炭酸のお代りを手渡し、声をかける。
「お前友達とか作れよ」
「いきなりなんですか」
「ガク先輩今年で卒業だぞ。いくら彼氏持ちでも孤独な二年間はキツイだろ」
「つばるが気にすることじゃ……」
 ニヤリと笑ったつばるの口元が、本気の心配では無いのを告げている。
 山ほど友達が作れる人はいいですね。
 努力もしてない自分を棚に上げるのもなんですが。
「アリスだっけ、あいつでもいいじゃん」
「自分を性的に見てる人と友情はちょっと」
「確かにそれはキツイな」
 じゃあ俺らはなんだろな、とつばるは馬鹿な考えを口に出さずに飲み下した。
 後ろから現れたこばるがつばるの頭を小突く。
「お前また余計なこと言ってねー?」
「兄貴ほどじゃねえよ」
「マイス食い行こうぜ」
「甘いの好きじゃねえよ」
「うっせ、にーちゃんに従え」
 兄弟仲良く去っていくのを見送ってから、ブルーシートに寝転がる。
 流星はどの方向から来るでしょう。
 三秒以上流れたら、何かを願うにはいいかもしれません。
 ガサリと音がして、隣に陸が座る。
「なんか、久しぶりだね。かんなちゃん」
 その顔は、あの騒動以来日に日に影を増していた。
「そうですね、ご迷惑おかけして」
「俺ね、薫ちゃんとひと悶着あってさ」
「知ってます」
「だよね」
 こく、とカルピスを飲んでから陸が目を合わせる。
「それが原因で頼れる人を減らしちゃってたとしたらごめんねって、謝りたくて」
 真面目ですか。
 なんでそんな優しいんですか。
「気にしないでください。あれは私にとって避けようのない災害だったんです。皆さんまで巻き込んでしまってすみません」
「それこそ謝んないでよ」
 陸も寝転がる。
 星が大きく光りながら落ちていく。
 おおっと声が上がった。

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