もうLOVEっ! ハニー!
第16章 台風の目の中
カメラロールに残された裸体を見ながら、峰清龍は収まらぬ昂りに何度目かの射精をティッシュにくるんで捨てる。
たった五ヶ月。
されど五ヶ月溜め込んできたものが一気に外へ外へと、興奮を冷めやらない。
つい三時間ほど前までそこに横たわっていた影を追うように、シーツにこびりついた匂いを貪る。
次は三日後。
それまでに岳斗が新たな痕を刻むことは無い。
荒い息が虚しく部屋に響き、脱力して仰向けになる。
記憶にこびりついた白い裸体が、今日のものに更新されていく。
それは目の前にある宝物で、自分の声ひとつで好きにできる引き出しの玩具のよう。
本当にバカな女の子。
こんな自分に良いようにやられて。
昼休みの岳斗との会話を思い出す。
記憶力がいいものだ。
自分でも忘れていた会話なのに。
友情を壊す行為に手を出した黒い背徳感に、背中がゾクゾクと冷えていく。
バレる訳には行かないと一学期の頃には思っていた。
今夜を経て、いつバレてもいいと考えが変わる。
誰にも手出しをさせぬようにもっと早く行動に移すべきだったとも思う。
勝見博也たちが来る前に。
岳斗が告白する前に。
あの再会の朝に、さっさと関係を持ってしまえば良かった。
そうすればあれ程乱暴に抱くこともなかったはず。
日々重たくなる嫉妬に苦しまずに済んだ。
いや……
身を起こして頭を抱える。
ガクと付き合わなければ、傍観者として終わったはずなんだ。
誰のものにもならなければ。
遠巻きに見て済んだはず。
毎日のように二人の行為を想像し、身勝手な嫉妬を募らせた末の蛮行だ。
違う。
何を言い訳を探している。
単純なこと。
あの怯えた瞳をまた見たくて。
こじ開けたくて、部屋に呼んだのだから。
誰にも言えぬように予防線を張って、力で組み伏せた卑怯者。
わかっている。
わかっていても、期待をしてしまう。
今からでもまだ間に合うと。
短く浅いであろう経験を上塗りし、自分を刻みつければ……
ー私は、清龍のものですー
無理やり言わせた言葉でも、その声が反芻されて笑いが止まらなくなる。
死ぬほど嫌であろう相手に服従して。
これから少しづつ望んで足を運ぶように、行為を重ねていこう。
早く自分のモノに。
次は、何をして、あげようか。