もうLOVEっ! ハニー!
第18章 砂の城を守って
面会カードに記入を済ませ、簡易な名札を首から提げて、エレベーターの順番に並ぶ。
差し入れのカバンを手に、階数ボタンを押して、機械音に心を無にする。
ポーン、と音がなり、目当ての階に降り立つ。
二度目となるその病室の扉を開き、手前右のベッドのカーテンを開いた。
「起きとるか、清」
「時間通りだな、ガク」
前夜に予告をしていた岳斗は、隆人から任された荷物一式をベッド脇のテーブルに置く。
「これ、学園からの資料とタブレットな。遠隔授業てのが便利やね。小テストとか期末試験も受けられるらしいで。それから……退院が間に合わんかった時のための願書申込書な」
まだ腕が伸ばしづらい清龍が取りやすいように、パラパラと並べていく。
「なるからの飲みもん、禁煙タブレット。汐里アニキからは病院食まずい時の選りすぐりふりかけ、小粒梅干し……あと、三年の俺らからコレ」
差し出した新機種の携帯に、清龍から戸惑いの視線が返される。
「バキバキになったんやろ。乗り換えできるかわからんけどSIMフリーのやつ。なんなら、今ここでやったげてもええで」
「ガク……」
ため息を吐きたいのを我慢して、岳斗は首を振る。
「やめろや。俺は問い詰める気もないし、お前が本当のこと言う気ないのもわかっとる」
丸椅子を脇から引き出して、背丈に合わずに窮屈に腰かける。
清龍はこの三日で痩せたように見える。
でも、よく寝れてるようだ。
「退院までは司がプリントとか届けに来てくれるからな。俺は今日で最後。その方がお前もええやろ」
「……そうだな」
「いやー……三年の友情はまだあるで。バイクの後ろ乗ったん清だけやし。ただまあ、今回の件は俺の中で整理できひん。つばるが起きてから問いただす気もない」
声がだんだん暗く小さくなる。
「けど俺、しんどいんよ。嘘つかれるんは」
清龍から返事はない。
「かんながな、お前の話題を露骨に避けとる理由を聞くつもりも無い。司が何かを隠しとるのもどうでもええ。俺は、ただ、お前が嘘ついとったんが無理」
新機種の携帯を充電器に挿しつつ、感情を置き去りにしてスラスラと言葉が出る。
「隆にいが学園に掛け合って入院許可を代理人手続きで進めたらしいな。一月か二月には帰ってくるやろ、清。そん時までには、俺も冷静になっとくから」
貼り付けた笑顔のまま。