もうLOVEっ! ハニー!
第18章 砂の城を守って
清龍は仰向けに横たわったまま、何も言えずに視線を落としていた。
岳斗は立ち上がり、深く息を吐いた。
「家族に連絡が行かんようにした隆にいには、一生頭上がらんな。退院したら恩返しでもしとき」
「すごいな……あの人」
「お前が泣いたん初めて見た言うてたからな。たまには手紙でリハビリの様子でも送ったげて。親代わりやからな……この三日間なんも食うてへんで、あの人」
もう一度息を吐き、カーテンを開く。
もうこの病室に来ることは無い。
最後に清龍の顔を見た。
「墓場まで持ってくもんは半端に出してくんなよ。そん時は、俺も抑えきれんからな」
「ガク……色々、ありがとう」
「きしょいわ。似合わんで」
ヘラヘラと笑いながらも、声が乾いている。
本当は……
ほんまは、殴り掛かりたい。
なあ、吐けや。
かんなに何かしたやろ。
つばるがブチギレる何かを。
何してんねん。
アホなんか。
後輩巻き込んで情けない。
司の口が滑ってたで。
お前が俺にだけは訳を言わんて。
せやから、今日も止めに来とった。
会わんほうがええと。
そんなんピースを集めたら……いやでも思い当たってしまうやろ。
最悪なケースが。
拳を握り、グッと気を鎮める。
「じゃな、清」
「ああ……じゃあな」
病院から出てバスを待つ間、ふと手のひらを見ると爪がくい込んで血が滲んでいた。
運び込まれた日に清龍に会った時とは、随分と心境の変化が激しい。
バスケの話をしたんが、嘘みたいや。
「ガク先輩、来てたんすね」
「おう、こばる。お疲れさん」
毎日見舞いに来ているこばるが、ジャージ姿で近づいてくる。
「バイクじゃないんすか」
「事故りたないからな」
その一言に何かあったのかと察したこばるは、追求することなく頷いた。
「つばるのやつ、あと二日意識が戻らなきゃ、医者と親が治療方針話さなきゃいけねえらしくて」
「それまでに起こさんとな」
「それです」
バスがやって来て、会話が途切れる。
岳斗はぼんやりと入学してからを思い返していた。
身長が高く、バスケ部の先輩から陰湿な嫌がらせを受けているのを清龍に話した一年の春。
結果で見返そうぜと自主練に付き合うてくれた。
元カノと別れた時も朝まで司とゲームをした。
将来の話を無限にした。
「あー、しんどいな」
目を閉じて、小さく零した。