もうLOVEっ! ハニー!
第18章 砂の城を守って
あの夜、試合の夜、ガク先輩と過ごすことはありませんでした。
というより、あれから三日目にして、ようやく二人きりになれたのが今です。
夕方五時にノックが鳴り、病院帰りの岳斗が玄関で力無く挨拶をして抱きついてきた。
寄りかかるようにギュッとされて、危うく倒れるところだった。
肩に顔を埋めたまま、しばらく動かないので、そっと声をかける。
「大丈夫、ですか」
「……疲れた」
今日は清龍さんに会ったはず。
朝メッセージで見舞いに行くと言ってたから。
何の話をしたんでしょう。
悲しさと無力感が漂う空気に、少し心臓が焦る。
腕を伸ばして鍵をかけ、しばらく抱き合う。
岳斗が顔の向きを変えて、首筋に唇を這わせる。
「ひっ」
不意打ちなので体が跳ねてしまう。
背中を支えていた大きな手が腰まで下がってくる。
久しぶりの感覚に、力が抜けていく。
ちゅ、ちゅ、と首から鎖骨に優しくキスをしながら、低い声で囁かれる。
「今夜泊めてくれへん?」
「んッ……え、いっ、いですよ」
ぬるり、と柔らかい舌が喉元を舐めて、足を後ろに引いてしまう。
だって、もう立ってられない。
「ベッド行こ」
急に両腕で抱き上げられて、ぶわっと顔が赤くなる。
「やめ、重いですって 」
「もっと食べや。軽すぎ」
フワリと優しく布団の上に寝かされて、上着を脱いで上半身を露にした岳斗が両手で服をたくしあげてくる。
まだ、痕が、消えてないはず。
服の裾を掴んで抵抗すると、抗えない力で手首を掴まれて、顔の横に手を固定された。
両手首を掴んで押さえつけた岳斗の顔が、逆光になって暗さを増す。
「嫌やったら、やめるから……どうしたいか教えて」
逞しい胸板に、筋肉に覆われた肩。
力の籠った首筋。
つい目を奪われてしまう。
「えと……その」
いつもはにこやかな眼が、見たことないくらい見開いてじっと捕らえてくる。
怒りを鎮めるような荒い息に、体がこわばる。
「まずは、ハグしませんか」
ふっと表情が緩んだ。
いつもの、ガク先輩です。
手首を解かれ、両手を広げると、さっきよりも強い力でギューッと抱きしめられた。
温かい体温が心を落ち着かせてくれる。
「かんな、好きやで」
優しい声が、包み込む。
「私もです」
横向きに転がって、足を絡ませさらに強く抱き締め合う。