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もうLOVEっ! ハニー!

第18章 砂の城を守って


 隆人さんの運転に揺れつつ、ナプキンじゃなくてタンポンにすればよかったと後悔しても遅いのです。
 予定通りの生理に、なんで今日なんだと御手洗で呟いたのも数時間前のこと。
 しかし大きな安堵もありました。
 望まない妊娠ほど怖いものはありません。
 今回の周期が終わったら、取り寄せたピルを飲もうとのんびり考えながら、景色を眺める。
 今日の音楽は歌謡曲でなく、映画で聞き覚えのあるメガヒット洋楽。
「隆にい、クマ凄いけど事故んなよ」
「そういうことは言わないものですよ、尚哉」
 ルカのフォローに隆人が苦く笑う。
「つばるが今朝までに起きてくれたら良かったんだけどねー。心配でね」
「こばるも辛い日になりますね」
 身内が意識不明の重体の最中で試合。
 想像を絶する気持ちなのでしょう。
 もしかしたら、三回戦で負けるかもしれない。
 不躾にそんなことすら過ぎってしまう。
「今日の差し入れ、すごい量じゃん」
「汐里が夜遅くまで弁当作ってたらしくてさー」
「みんなで食べるの楽しみですね、松ちゃん」
「えっ、そうですね!」
 会話に参加しないのを気にさせてしまった。
 迷惑かけたくないのに。
 何もしないことが、最善とは限りません。
「三年が引退したら、こばるが引っ張ってくと思うんだけどね。つばるがいないとね」
「目が覚めたら、つばるがバスケ部入るように説得すんだろ、隆にい」
「よくわかってるね」
 尚哉さん、流石。
「わかるよ。過去に引き戻さないように最強の門番じゃんね。清龍先輩も家族連絡回避したんでしょ」
 うわ。
 嫌な話題です。
 隆人は音楽に乗るようにハンドルを指で弾く。
「大したことはしてないよ。学園のあらゆる制度を利用して、費用と責任を工面しただけさ」
 それにしては疲れが滲み出た声。
「何があったんでしょうね、あの二人」
「喋ってんの見たことなかったけどな」
「私も一度も見た事なかったです……」
「案外隠れタバコ仲間だったかもよー」
「じゃあ隆にいが把握してたはずだろ」
「そんな屋上を監視してる訳じゃない」
「過去に繋がりあったんでしょうかね」
 ルカさんは何気なく言ったのかもしれません。
 ただ、私には大ダメージだっただけで。
 過呼吸になりかける肺を何とか落ち着けようと、両手で口を塞ぐ。
 不審な音が出てしまい、尚哉が乗り出してくる。

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