もうLOVEっ! ハニー!
第18章 砂の城を守って
「つばる、意識戻ったんですね」
泣きそうに歪む顔。
その後ろから岳斗と隆人が現れる。
隆人は涙が溢れるのを袖で隠し、早足でベッドに近づいた。
「良かった……心配したよ」
こばると隆人に抱きしめられて動けないつばるに、岳斗が静かに笑いかける。
「おはよ。清は怪我しとるけど元気やで」
「それ聞いて安心しました」
かんなはざわりと寒気がしたが、顔には出さない。
カーテンの中は窮屈なので、一人ずつ話すことにして、まずはこばる以外が外に出た。
隆人は学園に報告すると言って談話室に向かう。
残った岳斗とかんなは廊下のベンチに腰かけた。
忙しそうに行き交う医療職の足取りに、雑談をする気も失せてしまう。
つばるの意識が戻った。
意識障害などはないのでしょうか。
後遺症は。
頭を強打したと聞いてます。
屋上での出来事は。
沈黙は破られるのでしょうか。
隣の岳斗も同じことを考えていた。
清が喋らんかった真実が聞けるのか。
聞くべきか。
そこにかんなはおるべきか。
野暮なことか。
扉が開いてこばるが手招きをする。
「かんな、次入る?」
「はい、行きます」
岳斗は声をかけなかった。
こばると入れ替わりに、カーテンの中に入る。
つばるは体を動かすのがだるいのか、仰向けのまま、指先一つ動かさない。
目線だけこちらを向く。
「かんな、元気か」
「なんですかそれ……つばるこそ、頭痛かったり、記憶が足りなかったりしませんか」
「ふ、看護師かよ」
何を話そうとしてたのでしょう。
ただ、心配と不安だけが占めていて。
「あの、屋上でのことって」
「お前は関係ない」
「でも……」
「あー、でも、峰先輩も冬まで入院らしいじゃん。それはお前にとって良いことなんじゃん?」
心臓が早鐘を打つ。
口が乾く。
それって、つまり。
私が清龍先輩に会わないように。
まるで。
まるで、そのために。
「ちげーから」
「えっ」
「かんなが今思ってるようなことは無いから。ただタバコもらって、くだらない言い争いしただけ」
それで通すつもりですか。
言葉には出ない。
「そうですか……私は、つばるが意識戻ってくれて良かったです。唯一の同期なんですから、途中退場しないでくださいよ」
つばるが可笑しそうに笑う。
「そりゃどーも」
穏やかな顔で。