もうLOVEっ! ハニー!
第18章 砂の城を守って
岳斗が入ろうとした時に、丁度主治医が看護師と共に現れた。
こばるが同席して説明を聞くことになった。
遅れて現れた隆人もそこに参加する。
面会時間の制約で、先にバスで帰ることになった。
結局話せなかった岳斗は、バス停で名残惜しそうにため息を吐いた。
「すみません、私長かったせいで……」
「いや、また面会来れるからええけど。良かったな、つばる意識戻って」
「そうですね」
日が沈みかけている。
朝からの疲労感がドッと押し寄せる。
運転していた隆人は更にだろう。
「ごめんな、今朝は変な話して」
「え、あ、あの時ですね。いえいえ、私も先輩の気持ちを考えてなかったなあと反省してて」
「あとミサンガありがと。俺、何回も訪ねたから作るの邪魔してたやろ」
「それは合間を縫ってましたから、大丈夫です」
バスの光が近づく。
これに乗るのもあと何度か。
いつになく混んでいたので、少し離れた席に座る。
かんなは窓から病院を眺めた。
ー峰先輩も冬まで入院らしいじゃん。それはお前にとって良いことなんじゃん?ー
つばるの言葉が脳の中で反芻する
それを望んでたかのように。
三階で引き止めた時、つばるはなにをどこまで見抜いたんでしょう。
最悪の過去が二人。
何を話したのでしょう。
頬杖をついて外を眺める岳斗を見やる。
もしも知られてしまったら、この関係は終わってしまったのでしょうか。
もしあのままだったら。
いつかは、バレて、縁が切れたでしょうか。
私自身では終わらせることの出来なかった恐怖の時間を、突然の事故が打ち消した。
これはただの幸運でしょうか。
ガク先輩の話だと携帯が全損して、新しい端末を渡したとのことですし、データも消えてくれてたら。
無かったことにはできなくても、これ以上の不幸は訪れないのでは。
バスケ試合に集中して、考えないようにしてましたが、今回の件は私にとって都合が良すぎます。
そして、つばるのあの言葉。
ああ、考えたくない。
考えてしまったら、今の生活がつばるの犠牲の上に立つことを認めてしまう。
だって、それは私だけが解けるパズル。
わざわざ試合の日を選んだのも計画的。
どうしてわざわざヒントを教えてくれたんですか。
そんな手段に出るなんて、誰が思います?
目を閉じても、睡魔は来てくれませんでした。