テキストサイズ

もうLOVEっ! ハニー!

第19章 友情の殻を破らせて


 昼下がりの陽光の下、集った寮生は四人。
「なんで美弥がおるんかなあ」
「あんなにおおっぴらに待ち合わせを聞いちゃあ、観に来ないわけにはいかないもんねえ」
 ニッコニコで岳斗の肩を叩いている。
 場所選びをしていたルカが、呼び寄せるように手を振った。
「この場所にしましょう。自然体で全身とアップを二枚ずつ撮れればいいので、あまり意識しすぎないでくださいね」
 普段は見せない緊張感がルカの顔を彩る。
 学園だけでなく、居場所を作った人は凄い。
「こんな格好でええの」
 淡い水色のTシャツに黒のサルエル、グレイのスニーカー。
 ブレスとピアスを外そうとしたが、ルカがそのままでと指示を出す。
「無理してコーデしてもぎこちないので、いつもの格好でいいんですよ」
 携帯のカメラモードを色々と調整しつつ、立ち位置を決めていく。
 普段現場で周りをよく見ているのだろう。
 言葉が明確で、テンポがいい。
「頭身がわかりやすい方がいいので、そこの木に肘でもたれるように立ってもらっていいですか。あ、いいですね。何枚か撮ります」
 美弥が声なき笑いを両手で押さえながら、邪魔せぬように見守っている。
 かすかに鼻息が聞こえて、つられて笑いそうになる頬にぎゅっと力を込める。
「いつもルカは何考えとんの」
「カメラの向こうのファンたちに、うまく愛を伝えられるかなって考えてますよ」
 あまりに自然に出てきた言葉に、三人が絶句する。
 プロです。
 その目つきの色気あること。
 一気にハードルが上がってしまったのか、座り込んだ岳斗にルカが近づく。
「あ、いいですね。頭抱えて目線だけこっちに」
「こんな?」
「先輩の腕の筋肉をうまく伝えたいですね。もう五度くらい外側向けて。肘をです。目線はカメラのやや下。次は目線逸らしてください。腕外して、頬に当てる感じで。笑えます? いい感じです」
「ルカってこんな喋る人だったんだねえ」
 美弥の言葉にウンウンと頷いてしまう。
 普段は会話に入ってきても距離を置いた口調なので、尚更ギャップに見入ってしまう。
 もしかしたら撮影側にも興味があるのかも、とすら思った。
「お疲れ様です。ベストショット選ぶので、ちょっと待っててください」
 ベンチに座ったルカに会釈してから、こちらに戻ってくる。
「凄かったですね」
「固すぎじゃん、ガク」
「言うだけはタダでええな」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ