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もうLOVEっ! ハニー!

第19章 友情の殻を破らせて


 それにしても鮮やかな撮影でした。
 撮られた本人は疲れきったように、両手で頬をムニムニと揉んでいる。
「表情がわからん……」
「やっぱ素人には難しいよねえ」
 その遠慮のない口調が少しだけ羨ましくなる。
 同級生として築いてきた空気感。
 恋人でもそこに至るのは長いでしょう。
「ボク的にはこんなとか」
 両手で髪をかきあげ、男らしいキメ顔をした美弥に、つい胸がときめいてしまう。
 岳斗はげんなりと首を横に振った。
「なんでさ!」
「ルカのカメラの前でふざけてみ? 失うもんしかないからな」
「それは確かに言えてる。ガクちゃん天才」
「煽んな」
 そこで作業を終えたルカが戻ってくる。
 満足そうに目を輝かせて足取り軽く。
「良い。良いのが撮れました。一応これで大丈夫か見てもらえますかね」
 岳斗の前に携帯を差し出し、日光で反射しないようにそっと手を添える。
 その仕草ひとつが美しい。
 覗き込んだ岳斗が、なんとも言えない顔になる。
 抑えきれないほどの恥ずかしさと、一片の喜び。
 パタパタと手で顔を扇いでから、答えた。
「ええんちゃう」
「ボクにも見せて!」
 すかさず飛び込んだ美弥が、目を見開く。
 すぐに手招いてきた。
「やばい! かんな! これは惚れる」
「やめてくれ」
 ようやく順番が来たので、そっと画面を見る。
 ポートレートモードでぼやけた背景に、飛び込んでくる完璧なプロポーション。
 木に背中を軽くつけ、自然体な立ち姿。
 眩しそうに少し眉をひそめてるのが、すごくキリッとした顔に見える。
 腕と足首周りの逞しいシルエット。
 緑の背景に黒のサルエルが映えて、色白の肌が日光を浴びてさらに存在感を増す。
「かんな、何か言うて」
「え……格好よすぎません?」
「しんどいって」
 ルカは嬉しそうに画面をスライドした。
 全身の次はアップだ。
 耳の後に片手を当てて、気だるく首を少し傾げた写真が出てくると、耐えきれないのか岳斗は両手を振りながら後ろに逃げた。
「むり」
「よく撮れてるって! 絶対お見合い写真これにすべきだにゃ」
「ブレスとピアスがすごい綺麗……」
「気づきますか、松ちゃん。ちゃんとアクセサリも気遣ってるんですよ」
 もちろん顔も綺麗なんですが。
 全体のバランスが雑誌の表紙のようだ。
 これが即興なんて。

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