もうLOVEっ! ハニー!
第20章 秘密のシャーベット
信頼、なんて言葉で表していいんでしょうか。
それはあまりに綺麗事すぎる。
「いいえ、いいえ……ただ、岳斗さんも見たじゃないですか。あの因縁を断ち切るのに、共通の目的が一致しただけです。笑えますよね、元いじめの主犯格が、いじめられてた私と協力なんて」
「ココじゃなきゃ起こらんわな」
緊張の糸が張り詰めていたせいか、肩がすごく痛くなって、フーッと息を吐いた。
すると大きな手が両肩をぐいっと後ろに引いて、ベッドに仰向けに倒れた。
横で右手に頭を乗せて寝転んだ岳斗と、やっと顔を合わせる。
長い指が顔にかかった髪を優しく耳にかけてくれた。
「ありがと。全部話してくれて。まあ、心配しとった関係性じゃなくて安心半分、俺に話さんかったのもなんとなくわかる気持ち半分……それ込みでもおさまらん気持ちが八割」
「足して十超えてるじゃないですか……」
「そこは限界近かったから、キャパ狂っとる」
くく、と笑ってから岳斗はため息を吐いた。
「俺な、中学の時、いわゆるやんちゃしとってな。結構終わっとる中学で、教師も諦めとったし。毎週のようにケンカ、やり返しの繰り返し。テストだけはパスしたから、なんとか卒業できたわけやけど。ある日全部がくだらんくなって。誰も俺のこと知らんとこに逃げよ思ったら、えらい学園寮見つけて」
私の後ろに中学の映像を見ているような遠い目で。
「一年の時に危うくまたやらかしそうになって、汐里が止めてくれてな。代わりに夢中になるもんをって、そっから服に凝り出して、ピアス増やして……けどまさか今日みたいな日が来るなんて思わんかった」
「本当ですよ。今日はその話がしたかったのに」
「アリスみたいなんに、目をつけられるかんなが悪い」
「それって……」
「うそうそ。そんな悲しい顔すんな。アリスは二学期も手ぇ出してきとんの?」
脳裏にお尻を撫でられ、キスされた瞬間が蘇る。
目にまでそれは流れていたようで、岳斗が汲み取ったように目を細める。
「どうしよか。美弥まで出し抜いた女やからね」
「ちゃんと自衛します……」
「無理。だから、もう外に出さんとこか」
冗談みたいな声色なら、もっと目まで笑ってくれないと。
岳斗の手が首の後ろを掴んで、引き寄せられる。
「このまま俺の部屋に閉じ込めとこか」
暗幕の隙間から見える光はもう消えそうなオレンジで。
夜が降りてくる。