もうLOVEっ! ハニー!
第1章 生まれ変わり
どこに返事をしたらいいのかわからず固まってしまう。
陸がこばるから庇うように進み出る。
「怯えてんだろ、てめえがそうチャライ格好してっからよ」
「そうかあ? これ、普段着だろ」
しかし、何でしょう。
こばるさんに見覚えがあります。
こう、黒髪にしたら……
「つ、ばるさん?」
さっきまで見ていたあの無表情が重なる。
似てないはずなのに。
「あれ? まさかの弟と知り合い? じゃあ随分遠くから来たねー、JCちゃん」
「いい加減JCはやめろ。あ、名前なんだっけ」
弟。
その事実の認識にまだ間に合っていないのです。
まさか、完全に断ち切ったはずの過去の人物が出てくるなんて。
なんのために、県境を越えた学園に家族にも秘密に出てきたというのでしょう。
「ちょっと、ちょっとー。フリーズしちゃってるよ」
こばるが手を振る。
はっと目を開けて、姿勢を正す。
「すみませんっ、申し遅れました。松園かんなです」
「かんなちゃん? やだ、チョー可愛い」
「どっか行けよ、チャラ男」
可愛い。
つばると同じ目で絶対に言わないことを云う。
心臓がばくばくと鳴ってます。
白いTシャツに髑髏の柄。
それをいじりながらこばるが近寄る。
「ねーねー、なんでここ来たの?」
「おい」
「いーじゃん。通過儀礼みたいなもんだろ。わざわざ裏寮のここ華海都寮に来るなんてさ。しかも女子一人で。卒業式帰りって感じ?」
「……探偵さんですか」
「ははっ、そのあだ名はねーですけど」
全てがズキズキとくる。
そう。
この寮を選んで、卒業式の後に急いで来たのは私です。
常識人は決して近寄らないこの裏寮に。
「隆にいのとこ行ってからでいいだろ」
「そんなにヤバい理由~? 違うでしょ」
「やめろって」
息を吸う。
言葉を紡ぐために。
「過去の自分を殺してきました」
二人が真顔になる。
その痛々しい沈黙が、話しやすかった。
「私、小学校からずっといじめられてきたんです。家族も誰も助けてくれなくて、むしろ嫌われてて。今日も机は焼却炉に捨てられてましたし、鉛筆削りをこう、頭にぶつけられて怪我したんです。でもそれは全部過去のことです。私は家族も知り合いもいないここで新しく生まれ変わるんです」
吐き出した後に来る、達成感と後味。
二人はなんていうんでしょう。
陸がこばるから庇うように進み出る。
「怯えてんだろ、てめえがそうチャライ格好してっからよ」
「そうかあ? これ、普段着だろ」
しかし、何でしょう。
こばるさんに見覚えがあります。
こう、黒髪にしたら……
「つ、ばるさん?」
さっきまで見ていたあの無表情が重なる。
似てないはずなのに。
「あれ? まさかの弟と知り合い? じゃあ随分遠くから来たねー、JCちゃん」
「いい加減JCはやめろ。あ、名前なんだっけ」
弟。
その事実の認識にまだ間に合っていないのです。
まさか、完全に断ち切ったはずの過去の人物が出てくるなんて。
なんのために、県境を越えた学園に家族にも秘密に出てきたというのでしょう。
「ちょっと、ちょっとー。フリーズしちゃってるよ」
こばるが手を振る。
はっと目を開けて、姿勢を正す。
「すみませんっ、申し遅れました。松園かんなです」
「かんなちゃん? やだ、チョー可愛い」
「どっか行けよ、チャラ男」
可愛い。
つばると同じ目で絶対に言わないことを云う。
心臓がばくばくと鳴ってます。
白いTシャツに髑髏の柄。
それをいじりながらこばるが近寄る。
「ねーねー、なんでここ来たの?」
「おい」
「いーじゃん。通過儀礼みたいなもんだろ。わざわざ裏寮のここ華海都寮に来るなんてさ。しかも女子一人で。卒業式帰りって感じ?」
「……探偵さんですか」
「ははっ、そのあだ名はねーですけど」
全てがズキズキとくる。
そう。
この寮を選んで、卒業式の後に急いで来たのは私です。
常識人は決して近寄らないこの裏寮に。
「隆にいのとこ行ってからでいいだろ」
「そんなにヤバい理由~? 違うでしょ」
「やめろって」
息を吸う。
言葉を紡ぐために。
「過去の自分を殺してきました」
二人が真顔になる。
その痛々しい沈黙が、話しやすかった。
「私、小学校からずっといじめられてきたんです。家族も誰も助けてくれなくて、むしろ嫌われてて。今日も机は焼却炉に捨てられてましたし、鉛筆削りをこう、頭にぶつけられて怪我したんです。でもそれは全部過去のことです。私は家族も知り合いもいないここで新しく生まれ変わるんです」
吐き出した後に来る、達成感と後味。
二人はなんていうんでしょう。